【記者解説】辺野古ありき、地方自治に国が横車


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 名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の対立は9度目の法廷闘争に発展した。焦点となるのは、新基地建設に伴う小型サンゴ類の移植を沖縄防衛局に許可するよう県に促した農林水産省の指示が、地方自治法の趣旨に反する違法なものだったか、否かだ。

 国は、許可条件がそろっているのに、標準処理期間の45日を超過してもサンゴ移植の可否を示さない県の姿勢が違法だとする農水省の主張を繰り返し、是正指示の適法性そのものに踏み込まず、司法に門前払いするよう求めるとみられる。

 一方、県は、サンゴ移植の許可を急がせるだけでなく、事実上強制させるような農水省の指示が、自治体の自主性を担保する地方自治法に反すると訴える。

 国の主張の根幹となるのは「2013年の埋め立て承認が有効」との係争委の判断だ。軟弱地盤の問題が明らかになり、工事を進めるためには地盤改良に伴う変更申請が必要になっているが、「変更承認の可能性がある限り埋め立て承認は有効」としている。

 係争委の判断は、「辺野古工事推進」の国策に従い、県の意思決定にまで口出しした農水省の姿勢を追認した形で、県は司法の場でその妥当性を問い直す。

 今回の裁判は、二審から審理が始まるため、判決は早ければ年内にも出る見込みだ。地方自治法に基づく県の訴えは、地方自治体の自治の在り方を司法に問うものだ。いずれの裁判でも司法は問題の中身には触れることを避けてきた。9度目となる問い掛けで、固く閉ざされた審理の扉を開くことができるか、注目される。
 (安里洋輔)