【島人の目】菜園に差すコロナの影


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 ことしは新型コロナのせいで2月以来、何もかもが異例づくしの展開になっている。イタリアは一時期、世界最悪のコロナ感染地となって全土がロックダウンされ、住民の外出や移動が厳しく制限された。

 僕は毎年3月になると自宅敷地内にある菜園で土を起こし、プランターで育苗なども行って野菜作りをする。ことしは自宅待機で時間があり余る分、菜園仕事にも熱が入りそうなものだった。ところがまるっきりそんな気分になれなかった。菜園仕事が始まる3月からが、まさにイタリアのコロナ地獄のピークだった。不安が募って野菜作りどころではなくなっていたのだ。

 4月も終わる頃にようやくその気になって、菜園全体にサラダ用野菜の混合種をびっしりとまいた。一部を普通に収穫してサラダとして食べ、残りは生いしげるままに放置しようと考えた。

 菜園は有機農法で耕しているため雑草が繁茂し虫がわく。特に雑草に閉口する。だがコロナが猛威を振るう中では菜園の草取りもできるだけ省略したかった。サラダ用の野菜は根がおだやかで除去が簡単だ。土中深くまで根を張るしつこい、処理に困る、ある種の雑草とは大違いである。そこで野菜を満遍なく育てて雑草の成長の邪魔をできないか、と思いついたのだった。

 5月になると各種のサラダ野菜が生いしげった。雑草は明らかに少ない。7月の今も同じ。どうやら思惑は当たったようだ。今後はこの手を使って雑草対策をしようかと考えている。

 しかし、野菜作りには連作障害という問題が付いてまわる。サラダ用野菜ばかりを毎年作付けすると障害が起きかねない。それでも始末に困る雑草よりはまし、とも思うが実際にはどうなのだろうか。新型コロナ禍がもたらしたもう一つの悩ましい課題である。

(仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)