<記者解説>辺野古抗告、異例のスピード結審 政府側またも「適法性」に触れず


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 自治権を取り戻そうとする、沖縄県の司法への期待はまたも裏切られるのか。

 名護市辺野古の新基地建設を巡る抗告訴訟は、わずか2回の弁論で結審した。政府は、これまで県との訴訟で繰り返してきたように、中身に立ち入らず訴訟を終わらせようとする主張を展開した。論拠としたのは「自治体が条例や規則に従わせるために訴訟は起こせない」とする、最高裁判決(2002年の宝塚パチンコ条例事件)だ。

 政府はこの判例を盾に、抗告訴訟が「私人」の権利利益の保護救済を目的とするもので、「公人」である県には訴訟を提起できないとした。県は、軟弱地盤の存在による埋め立て承認撤回を取り消した、政府の決定が違法か否かを問う「中身」の審理に持ち込む狙いだったが、2回の弁論ではその審理に至らなかった。行政法学者の意見書を提出し、弁論再開に望みをつなぐが、情勢は厳しい。

 弁論が始まるまでには、県関係者の間で期待感もあった。今年4月、辺野古周辺に居住する市民が国を相手取って起こした同種訴訟で、那覇地裁が原告の一部の「適格性」を認めたからだ。今後、辺野古工事を巡る裁決の是非という「中身」の審理が行われる見込みだ。今回の抗告訴訟でも同様の展開が期待されたが、審理の進展はなかった。司法は開きかけた扉を再度閉じてしまったかのようだ。異例のスピード結審は今後、県の弁護団の戦略にも影響を与えそうだ。
 (安里洋輔)