県内の新型コロナウイルスの感染者数が急増していることを受けて、県内の観光業界では夏の予約キャンセルが続出し、危機感が高まっている。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が5日に開いた観光対策会議でも「感染対策の強化を急ぐべきだ」と強い焦りをにじませた声が上がった。
県内のホテルでは宿泊キャンセルが相次いでいる。
恩納村のリゾートホテルでは、7月の週末は60~70%まで稼働が上がるなど、回復の兆しが見えていた。8月もファミリー層を中心に予約が入っていたが、緊急事態宣言後から連日キャンセルが止まらない。例年であれば80、90%と高稼働な時期だが、8月の月平均稼働率は15%まで下がる見通しだ。総支配人は「かなり厳しい。知事は県外観光客に自粛という言葉を使っていないが、結果的には(宣言が)渡航自粛につながっている」と肩を落とす。
■シーズン直撃
那覇市内のシティホテルでも宣言後の5日間で、8月に入っていた800室の予約がキャンセルとなった。10月以降に修学旅行の予約がまだ残っているが、現在の感染状況が続けば来週にもキャンセルが出始めると予測する。総支配人は「4月の緊急事態宣言後のような状況だ。感染対策を取っていくしかない」と話す。
OCVBは5日に観光関連13団体を集めた会議を開き、感染対策の実施状況や現状について意見を聞いた。ある出席者は「このまま観光客が減れば、観光業者の半分はつぶれてしまうのではないか」と強い危機感を示した。
■独自の対策
ホテルや旅行社、観光施設など観光業界では、ガイドラインを守り、加えてそれぞれの施設で独自にサーモグラフィーを設置するなど、対策を徹底しようという動きが進んでいる。
一方で水際対策には課題が残る。那覇空港では7月の4連休中は抗原検査を実施したが、現在は医師が確保できていないため空港内では検査ができない状況に戻っており、早期の体勢強化が求められる。
「観光客が感染を拡大している」という認識が県民の間に広まって、観光業に対する反感が強くなることを警戒する観光事業者も多い。OCVBの下地芳郎会長は「感染者数だけで判断していたらきめ細やかな対策はできない。(感染者数などの)数字が持つ意味を冷静に捉える必要がある」と話した。
(中村優希)