「銭」か「陣」か 名護市東江区「ジンガ森」表記 御願の歴史重視し「神ケ森」に


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 【名護】名護市東江(津波一夫区長)の東側に位置する「ジンガ森」は、漢字でどう表記するか長年議論されてきたが、このほど「神ケ森」とすることが決まった。人々が森を「神」としてあがめ、御願(うがん)してきた歴史を重視した決定だ。

名護市東江区が漢字表記を決めた「神ケ森」

 ジンガ森はこれまで「銭ケ森」「神ケ森」「陣ケ森」などと表記されてきた。今年2月9日に第4回東江桜スゥーブ(勝負)実行委員会が主催し「東江ジンガ森活性化シンポジウム」が東江公民館で行われ、「ジンガ森の漢字は何か?」と題し区民に問い掛けた。

 その中で実行委員から(1)1958年の比嘉宇太郎著「名護六百年史」には「銭ケ森」と表記されている(2)東江誌では「ジンガ森」とされている(3)昭和10(1935)年東江部落地籍図では「神ケ森」との直筆図面が残っている(4)区内聞き取り調査で数名の長老から「先輩方から神の森としてあがめてきた」との証言があった(5)森の南西には湧き水「ジンガー(神川)があり、枯れることなく区民に恵みを与えてきた」との話もあった―などが報告された。

 シンポジウム会場の同公民館でパネルシールの貼り付けコーナーを設置して、参加した区民の意思表示を確認した。

 「ジン」の漢字について、「銭」「神」「陣」の三つからアンケートしたところ回答した16人全員が「神」を選んだ。それを踏まえ東江桜スゥーブ実行委員会と東江ジンガ森公園構想委員会は「神ケ森」とするよう区に提案した。これを受け東江区は正式表記を「神ケ森」に決定した。人々が森を「神」としてあがめ、御願してきた歴史を重視した。

 東江区では本来なら役員会や総会に諮って決めるが、新型コロナウイルスの影響で総会は中止になり、区の役員による書面評決で全会一致で決まったと説明している。

 東江在住で元名護市長の比嘉鉄也さん(93)は「神ケ森に決まり良かったと思う。昔から神の森としてあがめられてきた。子どもの頃は松の老木があり、桜の時期はよく写生した思い出がある。戦争中は『陣』、それから『銭』としていた。ぜひ公園や避難所として生かしてほしいと願っている」と話している。

(幸地光男通信員)