9日投開票の今帰仁村長選は新人の久田浩也氏が現職の喜屋武治樹氏を破り初当選を果たした。喜屋武氏は玉城デニー知事や知事を支える「オール沖縄」勢力の支援を受けたものの、中道の政治姿勢を掲げる久田氏に及ばなかった。自民党が躍進した県議選以降、守勢に立たされる玉城県政や「オール沖縄」にとって村長選の敗北は痛手と言える。
前回と同じ顔ぶれで行われた今選挙は、沖縄3区選出の屋良朝博衆院議員が所属する国民民主を筆頭に立憲民主、共産の3政党と政治団体「新しい風・にぬふぁぶし」、玉城知事後援会が、辺野古新基地反対と玉城県政支持を明確にしている喜屋武氏を推薦した。
一方、社民と社大は地元支持者が割れていることなどを理由に「保留」(社民)と「自主投票」(社大)にするなど静観を決め込んだ。
複数の与党関係者によると、元村長の与那嶺幸人氏や元県議の大城秀昭氏ら地元革新系の一部は喜屋武氏の村政運営に反発し、水面下で久田氏の支援に回った。国頭郡区選出の平良昭一県議は社民らと同様の理由で今選挙には「関わっていない」とした。
社民幹部は推薦を「保留」したことについて「地元の革新系の重鎮の一部が久田氏に流れたことに加え、地元から『村民の判断に任せてほしい』と言われたためだ」と明かした。一方、地元関係者は「村長選は現職に対する評価であり、それ以上でもそれ以下でもない。政党や『オール沖縄』の支持の有無は関係ない。強いと言われる1期目の現職が落選することが全てを物語っている」と主張する。
選挙戦で久田氏は自主財源の確保や村民所得の向上、農業を主体とする産業振興などを掲げた。辺野古新基地建設を巡っては、普天間飛行場の閉鎖・撤去などを求めた2013年の「建白書」の実現を目指す立場を取る。
そのため、与党内からは知事後援会が喜屋武氏を推薦したことから「いらぬしこりを生んでしまった。地元が割れている以上、知事として何もしないことが正解だった」と語った。 (吉田健一、喜屋武研伍)