続くクラスターに医療負荷 沖縄のコロナ感染 減少傾向も予断許さず


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 新型コロナウイルスの感染状況について、県内は1人の感染者が平均何人にうつすかを表す指標「実効再生産数」が1を下回り、感染のピークは越えたとみられている。しかしクラスター(感染者集団)は依然くすぶり、重症者や中等症者らで病床は埋まった状態がしばらく続く見通しで予断を許さない。医療現場への影響が長期化する懸念もある。改めて県民一人一人が意識を変え感染症対策に臨む姿勢が求められている。

 第1波とされる4月の流行は県外の感染地域から持ち込まれる移入例が発端で、7月以降の流行も同じ流れをたどったが、感染者数の増え方は3~4倍の規模で推移した。

 背景に県外からの持ち込まれ方の違いがある。関係者によると、今回は感染がくすぶり続けていた東京の「夜の街」で働く人たちが断続的に来県し、県内でも同様の現象が発生。「夜の街」が大きな感染源となったとみられている。そこから地元客を伝って、市中や家庭に持ち込まれてしまった。県内では米軍関係者によるイベント開催などもあった。県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は「供給源が多かったとは言える」と特徴を分析する。

 4月は国による緊急事態宣言で自粛が厳しかったが、7月は移動制限の緩和で交流機会も維持された。さらに冷房が必要な季節となり、閉め切った空間ができやすい環境要因も加わった可能性もあり「複合的な要素が重なった」(高山医師)。

 再流行に備え、県は6月に国が見立てた実効再生産数1・7の数値から患者発生は1日最大33人で病床は200床を確保する計画を策定したが、7月以降の感染者は予想を超えて急増。実効再生産数が5を超える日もあり、確保すべき病床数を425床に見直した。

 4月との違いは医療機関や福祉施設でクラスターが発生し、高齢者の患者が増えた点も大きい。入院治療が長期化する可能性がある中等症以上が8月21日時点で132人に上るなど確保病床は入院患者でほぼ満床状態が続き、早くも県内の医療提供体制は窮地に立たされている。

 県の糸数公保健衛生統括監は「施設内クラスターなど高齢者での集団発生の可能性は消えていない。収束の見通しを立てるのが難しい」とし「感染者数は自然に下がっていかない。市中に広がり、どこでもらっているか分からないという意識を高め、行動する必要がある」と呼び掛けた。

 現状は県独自の緊急事態宣言延長で新規感染者数は減少傾向にはある。しかし高山医師は一部制限の解除や学校再開の動きを注視し警戒感を強める。「学校内クラスターの懸念は消えない。すぐに旧盆もある。お年寄りへ影響がどう出るか。旧盆後にひと山くる可能性がある。そうならないためどういう取り組みをするか十分考える必要がある」と引き締める。入院患者数の現状から「医療負荷は今後も続く」と指摘し、医療機関の実態を見定め警戒レベルを考える重要性を強調した。 (謝花史哲)