忘れられていたフィリピン残留 国籍回復の記録、沖縄県内初上映 親族再会は沖縄でも


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沖縄を訪れ、親族らとの面会を喜ぶフィリピン残留日本人2世の高良アントニオさん(右)(Kプロジェクト提供)

 【沖縄】戦争で日本人の親と生き別れになり、フィリピンや中国に残留した人々を追ったドキュメンタリー映画「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」(小原浩靖監督)が、沖縄市のカフェ映画館「シアタードーナツ・オキナワ」で上映されている。県内では初上映で、来月30日まで。県出身の父を持つフィリピン残留日本人2世が国籍を回復し、来県して親族らと対面する場面もある。

 映画では、フィリピン残留日本人2世の国籍回復を支援するNPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター(東京都)が、現地で聞き取りを重ねる活動などを記録した。太平洋戦争前や戦時中に移住した日本人男性を父に持つ2世たちの中には戦後、反日感情による差別から逃れるために山奥などに身を潜める人もいた。無国籍状態で教育などを十分に受けられないまま、今も現地で暮らす。戦争に翻弄(ほんろう)された市民の実態を浮き彫りにする。

国籍取得の知らせを聞き、うっすらと涙を浮かべるフィリピン残留日本人2世の新垣イノセンシアさん(同提供)

 同センターは日本に居住する親族らとの仲介役として、2世の来日も支援する。沖縄ではこれまでに、15人の2世が親族らとの再会を果たした。映画では、2018年に来県した高良アントニオさんが親族らと交流を深める様子も描かれた。中国残留孤児たちが差別や貧困を乗り越えていく過程も記録した。

 同センターによると、フィリピン残留日本人2世は3842人で、平均年齢は81歳。そのうち910人が無国籍状態にある。県出身の親を持つ人は65人とみられる。猪俣典弘事務局長は「2世も高齢になり時間は限られている。かつての戦争が引き起こした問題が今でも残っていることを知ってほしい」と話した。

 上映時間は9月9日までは午後1時、同10日からは午前11時10分。問い合わせは(電話)070(5401)1072。