コロナ不正受給、沖縄全県に波及か 「通帳出せ」脅して勧誘の情報も


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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、打撃を受けた個人事業者や中小企業向けの持続化給付金の不正受給が県内で多発している問題で、県警は特別捜査本部を設置して県内での実態把握を急いでいる。県内の複数の署にも「不正受給になるのか」「虚偽申請の話を聞いた」などと相談や情報提供が相次いで寄せられている。同給付金を巡っては沖縄タイムス社員の不正受給も明らかになるなど、県全体に波及している可能性もある。

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持続化給付金の不正防止を呼び掛ける中小企業庁のホームページ

 複数の関係者らによると、今年5月から6月にかけて不正な申請が本島中南部を中心に相次いでいたという。受給資格がないにもかかわらず、個人事業者を装い、確定申告した上で給付金を申請するという流れが大半を占めているという。県警は、背後に暴力団組織や同組織などに所属せずに犯罪行為を繰り返す半グレ集団などもいるとみて慎重に捜査を進めている。

 那覇市松山の飲食店でも一時、従業員の間で不正申請が横行していたとみられる。飲食業などの事情に詳しい男性(28)は「若い従業員らを中心に不正受給の話がSNSで拡散した。離島から申請に来た人もいた」などと話す。不正受給を勧誘する人から、暴力団や反社会的な組織の名前を出され「通帳出せ」「逃げたら殺すぞ」などと、どう喝された人もいるという。また、この男性の知人は通帳や印鑑、複写した免許証を仲介人に渡し、現金20万円を受け取ったが、不正受給に加担した自覚はないと話しているという。

 アクティア行政書士事務所の仲宗根隼人行政書士は「持続化給付金の申請において、必要書類の売上台帳は会計ソフトで簡単に作成できる上、手書きでも構わないとされている。第三者が発行する領収証や明細などの添付は義務付けられていないため、実際の収支を偽ることも可能だ」と指摘する。

 その上で「申請の際『入力必須事項及び証拠書類等の内容が虚偽でないこと』など7項目に宣誓、同意が必要になる。この7項目に背く行為は、不正申請に当たるといえる」と強調し、甘い話に乗って不正な申請に加担しないよう注意を呼び掛けている。