安倍晋三首相の辞任表明により、県内政局の焦点は次期衆院選に移った。解散の時期は、安倍首相の後継となる新たな首相が世論の動向や新型コロナウイルスの感染状況などを勘案し判断する見通しだが、県内の現職、新人候補はいずれも年内解散を見据えて選挙態勢の構築を急ぐ考えだ。
■1区 無党派の取り込み鍵
1区は共産の赤嶺政賢氏(72)と自民の国場幸之助氏(47)、無所属の下地幹郎氏(59)の現職3人が1議席を争う構図となる見込み。県都那覇市を抱え、県内4選挙区の中でも最激戦区に位置付けられる1区は浮動票が多いのが特徴で、無党派層の取り込みが当落の鍵を握る。
前回、前々回の衆院選はいずれも辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力の全面支援を受けた赤嶺氏が選挙区で勝利し、国場氏と、当時維新に所属していた下地氏は比例で復活当選した。「オール沖縄」勢力の前に自公政権側の候補者が連敗しており、国場氏と下地氏の出馬を巡って、経済界の一部からは保守分裂の解消を求める声が根強い。年内の解散総選挙もささやかれる中で、経済界の動きも焦点となりそうだ。
今年6月に改選された県議選那覇市・南部離島区(定数11)の議席を見ると、「オール沖縄」勢力の県政与党が6人、県政野党・中立が5人当選と拮抗(きっこう)する。全候補者16人の得票数を積み上げると、県政与党系が6万2119票、県政野党・中立系が5万4646票で、「オール沖縄」側が上回っている。
■2区 軍港移設 争点に浮上
2区は、社民現職の照屋寛徳氏(75)の後継となる北中城村長の新垣邦男氏(64)と自民現職の宮崎政久氏(55)の一騎打ちとなる公算が大きい。ただ、自民党内には元宜野湾市長の佐喜真淳氏(56)の国政進出を求める声も根強く、佐喜真氏の去就も焦点だ。
米軍普天間飛行場や嘉手納基地など基地所在市町村を多く抱え、暮らしと直結する基地問題が争点だ。さらに、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添移設を巡り、県と那覇、浦添の両市が軍港の北側配置に事実上合意したことを受け、浦添移設の是非も改めて注目されている。
新垣氏は7月22日に社民党の公認候補に内定したばかりで、近く正式に出馬表明会見を行う。現職の照屋氏が2003年の総選挙以来、保持してきた議席を社民として死守する構え。
宮崎氏は過去3回の選挙で照屋氏に敗れてきた。18年11月に、自民党国会議員の死去に伴い比例繰り上げ当選した。昨年9月に法務政務官に就き、新型コロナの水際対策に力を入れる。
■3区 一騎打ちの公算大
昨年4月に補欠選挙が実施されたばかりの3区は、前回補選と同様に、現職の屋良朝博氏(58)=国民民主=と、元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)=自民=の一騎打ちとなる公算だ。
普天間飛行場の移設先として埋め立て工事が進む名護市を抱えるだけに、選挙結果は辺野古新基地建設の行方にも影響を及ぼす。一方、北部12市町村が求めてきた北部基幹病院の整備など医療分野や教育など暮らしも主な争点となる。
昨年の補選は、投票率が43・99%と県内で実施された国政選挙で過去最低となった。解散総選挙となった場合は補選よりも投票率が上がることが見込まれ、激戦が予想される。
3区は、玉城デニー知事(60)が議席を保持していた選挙区で、前衆院議員の比嘉奈津美氏(61)=自民=と激しい選挙戦を展開していた。戦績は玉城氏の2勝1敗。3区は沖縄市、うるま市、名護市の3市が大票田。6月の県議選沖縄市選挙区は「オール沖縄」勢力の現職県議1人が落選。自民側が議席数を2に伸ばした。
■4区 県政与党の人選焦点
自民党が唯一、議席を持つ4区は、現職の西銘恒三郎氏(66)が6期目に向け準備を進めている。「オール沖縄」勢力は候補者が決まっておらず、今後は県政与党内の人選が焦点となる。
本島南部や先島地域を抱え保守地盤とされる4区は自衛隊配備問題や尖閣諸島問題が主要争点となる。さらに、第1次産業従事者が多いため農林水産業の振興や離島振興なども争点だ。
西銘氏は前回衆院選で、自公政権の候補者で唯一、県内選挙区で勝利した。経済産業副大臣や衆院安全保障委員長を務め、実績を全面に支持を固める。
「オール沖縄」内の候補者選考は、オール沖縄会議共同代表で県政策参与の照屋義実氏(72)に出馬を要請したが固辞され、人選は仕切り直しとなったばかり。選考方法を巡り、独自候補の擁立にこだわる立憲民主との対立も生じている。一方、前参院議員の糸数慶子氏(72)は出馬に意欲を示す。