「新聞投稿が心の支えに」 失語症リハビリで再開 豊見城市の玉城さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新聞投稿で使用する鉛筆を握る玉城和子さん(右)と夫の嘉彦さん=18日、豊見城市平良

 【豊見城】沖縄県豊見城市平良の玉城和子さん(48)はくも膜下出血の後遺症で読み書きや会話が難しい失語症を抱えているが、「日々の楽しみ」として新聞投稿を続けている。夫で会社員の嘉彦さん(59)は「リハビリにもなる」と温かく見守る。

 「何かおかしい」。今年2月、嘉彦さんが帰宅すると、顔面蒼白(そうはく)で言葉を発しない和子さんの姿があった。くも膜下出血だった。和子さんは救急車で搬送され、手術を受けた。命は取り留めたが、記憶障害や失語症などの後遺症があった。右目もほとんど光を失っていた。

 約4カ月の入院生活が始まり、言語聴覚士らのサポートを受け懸命にリハビリに励んだ。嘉彦さんも「『二人で取り組んでいこうね』と互いに支え合った」と話す。

 読み書きが好きな和子さんが新聞投稿を始めたのは4年ほど前から。日々の出来事や社会に対する思い、別の投稿者への意見などを書きつづった。いつしか「自分の投稿が掲載されることがうれしい」と毎朝、新聞のページをめくるのが楽しみになった。掲載された投稿や気になった記事はスクラップにした。

 だが、病気をきっかけに投稿は途絶えた。単語や短い文を書いたり話したりすることはできるが、長い言葉は難しくなっていた。6月、模合仲間の勧めもあり、投稿に再チャレンジした。ノートに下書きし、パソコンで文字を打ち込んだ。サポートした嘉彦さんは「誤字脱字は直したが、文体は本人の書いた通りにして、あえて直さなかった」と振り返る。

 和子さんが病気を患って以来二人は「けんかが減った」と笑う。「一緒にいる時間が増え、お互いを必要としている」と夫婦の絆が深まった様子。

 和子さんは今後も新聞投稿を続けると言い、「月に3回の投稿を目標に頑張る」と笑顔で語った。
 (照屋大哲)