『島の風Ⅱ』 深化する写真への愛


社会
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『島の風Ⅱ』石垣島写真研究会編 南山舎・2200円

 2冊の写真集を見ながら、フランスの思想家ロラン・バルトの、「アマチュア」についての記述を思い出しました。

 「“愛好家”は自分の享楽に連れ添って行く(《アマトール》とは、愛し、そして愛しつづける人、ということだ)。それは決して英雄(創作の、業績の、ヒーロー)ではない」(「彼自身によるロラン・バルト」より)

 「島の風」と「島の風Ⅱ」。著者は石垣島写真研究会(石垣島写研)です。石垣島写研は1987年結成の日本最南端の写真クラブです。「独創的な表現の向上」をモットーに石垣島を拠点とする会員が日々、写真を撮り、写真を語る活動を継続されています。

 「島の風」の発行が93年。7会員の作品が掲載されています。27年後の2020年に「島の風Ⅱ」を9会員の作品で刊行しました。グループを継続していくとさまざまな困難にぶつかるものです。33年に及ぶ活動には驚嘆します。「島の風Ⅱ」では変化・深化していく作品を見ることができます。

 新田健夫「白い夏」は「春秋高し≒日々是好日」となり、赤外写真のモノクロームからウィットに富むカラーへ。翁長正則「Forrowing my Feet…」は「景」へ。子どもや街のスナップは那覇の翳(かげ)る断片に。登野城安則「あの夏の記憶」は「あの夏の記憶~昼下がり~」に。ソフトフォーカスなどの効果を使った幻想世界はより洗練された光の粒となり魅惑的です。榎本武「水ガメの詩」が「心の岩」へ。水ガメを主観的にとらえた作風はさらに強固になり岩へと昇華しています。喜友名朝昭「舞」は「日々の風景」に。舞踊の写真は、生き物が舞う日常の世界へ変化しています。

 amateurという英語は、「愛する人」という意味のラテン語amatorが語源です。石垣島写研の皆さんはまさしくアマトールです。

 「論語」にはこうあります。「之を知る者は、之を好む者に如かず 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」

 「島の風」後に入会されたメンバーの写真の変化・深化を「島の風Ⅲ」で見られることを期待しています。

(タイラジュン・写真家)

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 石垣島写真研究会 1987年に結成。通称「石垣島写研」。日本最南端の写真集団として活動を続ける。月1回の例会のほか、不定期に撮影会、毎年12月には石垣市で写真展を開催しており、那覇市での写真展も過去8回開催している。