システム化された差別 司法、教育、雇用…負の連鎖<Black Lives Matter運動から見えたこと>②


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
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 黒人は警察による暴力以外に司法でも不当な扱いを受ける。陪審員の人種構成が判決に影響し大抵は、白人陪審員のバイアスがかかるのが通常だ。有罪判決を受け収監される黒人の確率は、白人の5倍以上になる。過去にえん罪で刑に処せられた黒人は、かなりの数だと言われている。

 公立学校の財源は地域の固定資産税で賄われ、低所得の黒人が住む地域と裕福な地域の間では、税収の格差が生まれる。学校施設や設備、そして学習能力などで教育格差が顕著に表れる。低所得地域の黒人が、その地域から出るために住宅ローンを組もうとしても、金融機関は赤線で囲まれたその居住地は、リスクが高いとして融資対象から除外する。この「レッドライニング」という制度も横行し、白人の方が融資を受けやすかった。

 個人による差別の実態を正確に把握できる監査調査という方法で、ある機関が実験をした。市議会議員や州議会議員に人種の属性をランダムに変えてメールを送ったところ、黒人名の発信者に返答する割合は白人名の送信者に比べて低い結果になった。公立学校の校長ら4万5千人にメールを送り会談を申し込む調査では黒人を装った送信者からのメールに対する回答は、白人を装った発信者の回答率より低い結果になった。

 米国の議員や公立学校のトップは、白人の対応を優先しがちで全ての市民を平等に扱っていないことが証明された。そのほかに雇用や医療保険などでも黒人は不公平な扱いを受ける。個人の努力だけでは克服しにくいシステム化された社会構造が横たわっているのだ。

 白人家庭と黒人家庭の子供が育つ過程を比較する動画を見ると、その差は歴然だ。社会的弱者が生まれながらに不利益をこうむり、その後の人生にもあらゆる面で負の連鎖を引き起こしていることが分かる。そして、誰もが無意識に持っている偏見や差別がある。黒人に対して「怠け者で罪を犯す怖い存在」など、ステレオタイプの潜在的なバイアスによって、必然的に差別が生まれる。

 その根源は、自分の人種が他の人種より優れているという思い込みから起こることである。そして白人至上主義の人たちが黒人と同等だと思いたくないのは、長年続いたあしき奴隷制度に起因するのではないかと考えている。
 (鈴木多美子バージニア通信員)