〈54〉最新の在宅医療 機器が小型化・高性能化


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 ここ数年で、沖縄県内の「在宅医療」はだいぶ充足している兆しが見えてきました。現在のところ、他府県と比較して高齢化率の低い沖縄では、まだ一般の方々には身近な医療とまでは言えないでしょう。在宅医療は、ほぼ聴診器1本だけで診察して、何かあればすぐ病院へ紹介するようなイメージを持たれがちです。しかし、最近では、医療機器の小型軽量化、高性能化が進み、自宅でも高度な医療が提供できるようになっています。そのいくつかを紹介しましょう。

 まずは超音波検査(エコー)。ポケットサイズのものから、少し大きめのノートPCサイズのものまでさまざまな機種があり、最新機種は病院で数年前に使われていた大型機種と性能的に変わらないものもあります。心臓や腹部、体表と診断範囲は広く、近頃、問題になる肺炎も海外ではエコーで診断するのが一般的となっています。また、簡単な処置、手術を在宅で行う場合の補助にも役に立ちます。

 血液検査では、白血球やCRPなどの炎症反応、呼吸状態を把握するための血液ガス、心不全や心筋梗塞のマーカー、血液凝固能力、糖尿病のHbA1C、いくつかのウイルス抗体などがその場で検査可能です。携帯型のレントゲン撮影装置を備えた医療機関もあります。これらの検査で、かなり正確な診断が下せるようになったため、薬の処方や注射、処置、簡単な手術なども適切に行えるようになりました。

 しかし、どんなに優れた医療機器であっても、それを使う医者次第。昔から聴診器は患者に当てる「ベル」の性能より、イヤピースの間にある医者の“脳力”が問題だと言われています。大切なのは、持てる道具を駆使して、適切な診断と治療を導く医者の知識、技量、センスなのです。救命救急出身の私も、数々の在宅用最新医療機器に囲まれて安心しています。それでも、不要な機器を使わず、常に研ぎ澄ました「抜かない刀」として準備しておくことが大切だと心掛けています。

(泰川恵吾、ドクターゴン診療所 外科)