「コロナで出てきた課題を解決するため、何かできることはないか」。新型コロナウイルスの感染拡大が県民生活に影響を与えていた4月ごろ、宜野湾市内の困窮世帯に食料品などを提供していた有志団体から市へ活動支援の相談があった。市職員は既存事業などを調べるうち、国が新設した「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」に着目した。
市は6月に「市民提案事業」(予算約500万円)を考案し、公募を開始した。7月10日の締め切りまでに30団体から申請があり、市職員は「こんなに来るとは」と驚く。そのうち8団体に7月31日、100万円と50万円をそれぞれ助成することを決定した。
採択された提案は、アルコールなどの依存症者向けオンライン講座や高齢者のIT機器活用講座など、ICT(情報通信技術)に関連するものが4団体で半数。高齢者の見回りや子どもの居場所づくり、弁当配布・飲食イベントなど人的交流に関わる活動もある。助成団体は来年2月まで活動を実施する。
100万円の助成を受けた嘉数ハイツ自治会は、オンラインのミニデイ開催を目指す。2月からほぼ中止となっているミニデイ参加者から「外に出ないから身体が動きにくい」などの声が寄せられていた。自粛期間中に歩けなくなり、施設でリハビリ中の住民もいるという。
同自治会はオンライン活用で「住民と交流を増やし、自治会活動の活性化につながる」と考えた。助成金を活用して貸し出し用タブレット端末や、アプリ「Zoom(ズーム)」などを導入し、10月の本格実施に向け準備を進める。
オンラインに慣れない高齢者が予想される一方、「平常時のミニデイや自治会活動への参加が困難な高齢者に参加してもらえるのでは」とも期待する金城均自治会長(69)。「新しい試みにわくわくする。全て市の予算で助かる」と話す。
また別の関連事業では、有志らでつくる「沖縄地域公共政策研究会自治会コミュニティー研究・支援チーム」が50万円助成を受け、大山区自治会でオンライン会議の開催を目指している。市の担当者は「地域課題を分かっている人たちが課題を解決するのが重要だ。持続可能な活動になればいい」と期待した。 (金良孝矢)
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臨時交付金は新型コロナの感染拡大防止や経済対策などを想定し、国から各市町村に交付されている。コロナ対策の事業として使い道の自由度が高い。当初は地域の飲食店への助成金活用などが多かったが、それぞれが知恵を絞った独特な取り組みも出てきている。コロナ禍という「戦後最大の危機」を乗り切ろうとする各市町村のユニークな取り組みを紹介する。
(土、日、月に掲載)
[市民提案事業]
【内容】市内で活動する団体に、地域課題の解決策提案を公募し審査の上、助成先を決定した。
【期間】2021年2月末まで活動を実施。
【対象】8団体(100万円=2団体、50万円=6団体)。
【事業費】500万6千円。