<識者の目・辺野古変更申請>北上田毅氏 外来生物侵入防ぐ条例回避が意図か 沖縄県内で埋め立て土砂調達を記載


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 今回の変更計画では、埋め立て土砂や海砂の調達が大きな問題となる。当初計画では、埋め立て土砂は「沖縄県、九州、瀬戸内周辺から購入」とされ、7割以上を県外から搬入する予定だった。

 変更計画では「沖縄県内又は九州地方」と変更された。「又は」であるから、県内と九州地方のどちらかということになる。「全量県内調達が可能」と強調されていることからも、やはり土砂の全量は県内調達されるのであろう。

 県外からの土砂搬入には、特定外来生物の侵入を阻止するための土砂条例が適用されるので、そのリスクを避けようとしたのだろう。九州4県も併記したのは、全量県内調達を明示して県民の反発が強まることを恐れたためではないか。

 県内では当初の本部、国頭に加えて、宮城島や糸満・八重瀬、さらに南大東島、宮古島、石垣島等、県内全域から土砂が搬出される。特に糸満・八重瀬からは必要量の2倍もの土砂調達が可能とされていることに驚く。戦争当時、多くの人々が亡くなった地域の土砂を戦争のための基地建設に使うことは許されない。

 土砂の海上搬送のために、本部・安和だけではなく、奥港・中城湾港・那覇新港などが使用される。那覇市内を土砂運搬のダンプトラックが走りまわるなど、ダンプ公害が県内全域に拡大する。特に奥港では2017年、辺野古への石材の海上搬送に対して区民挙げての抗議行動が続けられた。当時の翁長知事も海上搬送の停止を求めたため、防衛局もわずか一日で使用を断念せざるを得なくなった。再度の使用が認められるはずはない。

 地盤改良工の敷砂・砂杭やケーソン護岸の中詰め材として、約390万立法メートルもの海砂が必要となる。沖縄の年間採取量の2~3年分にもなる。海砂採取は、海の汚濁・海底地形の改変・海生生物の死滅など、環境への影響が大きい。西日本のほとんどの県では海砂採取を全面禁止しており、認めている県でも年間採取総量を制限している。

 沖縄県は総量規制もなく、このままでは深刻な環境破壊が危惧される。総量規制の早期実施など県の毅然(きぜん)とした対応が望まれる。

(土木技師)

 

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米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関し、県は沖縄防衛局が出した設計変更の承認申請書を公表し、意見を募っている。申請書の内容や今後の展開について識者に寄稿してもらった。