戦争体験継承 思い語る 「蟻の兵隊」上映でトーク


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
映画「蟻の兵隊」のトークイベントで戦争体験の継承について話す(右から)琉球新報社の小那覇安剛編集委員と池谷薫監督、辺野古県民投票の会元代表の元山仁士郎さん=13日、那覇市の桜坂劇場

 那覇市の桜坂劇場で上映中の映画「蟻(あり)の兵隊」(池谷薫監督)のトークイベントが13日、同劇場であった。辺野古県民投票の会元代表の元山仁士郎さんを司会に、池谷監督、琉球新報社の小那覇安剛編集委員が登壇し、戦争の残酷さや戦争体験の継承などについて語り合った。映画は18日まで上映している。

 「蟻の兵隊」は、1945年8月の敗戦後も中国山西省に残留し、中国の内戦に巻き込まれた元日本兵の1人奥村和一さんを主人公にしたドキュメンタリー。小那覇編集委員は、奥村さんが中国で聞き取りを進める中、日本軍の論理で現地の人を問いただす場面に触れ「沖縄戦体験者も話をしていて、心の中で戦場に戻っていることがある。戦争のむごさを感じた」と話した。また「体験者を顧み、過去に学ばなければいけないが、1945年を問い直す営みがなくなってきている現状は恐ろしい」と指摘した。その上で「75年前の戦争に向き合い、若い人に伝える大切さをかみしめている」と語った。

 池谷監督は「あれほど戦争を憎む人が、自分の中に日本軍の亡霊がいると知らされた瞬間、奥村さんも打ちひしがれていた。その姿は、戦争は一度行ったら死ぬまで放してくれないという重要なことを学ばせてくれた」と振り返った。最後に「国家といううそをつく化け物に、どう向き合うかが今、問われている。ぶれずに信念を持って生きた人の姿を目に焼き付けてほしい」と力を込めた。