<識者の目・辺野古変更申請>吉川秀樹氏 ジュゴンへの影響、予測評価に科学性欠落


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吉川秀樹氏(ジュゴン保護キャンペーンセンター)

 沖縄防衛局の設計変更申請は環境破壊の延長申請であり、公有水面埋立法の環境保全条項に反する。玉城デニー知事は認めてはいけない。国際的に注目されるジュゴンと関連させて3点指摘したい。

 1点目は基地建設が辺野古・大浦湾や嘉陽からジュゴンを追い出し、既に多大な影響を与えていることだ。昨年12月の国際自然保護連合はレッドリストで「南西諸島ジュゴン個体群」を「近絶滅」と評価している。これはジュゴンに「影響なし」と予測評価した防衛局の環境アセスの不備を示している。

 工事開始後の環境保全措置も機能してこなかった。環境監視等委員会の懸念や疑問はジュゴンの保全にはつながらず、結果として同委員会は工事の追認機関となっている。事後調査は行われてきたが、その報告書は環境破壊の記録とも読める。

 2点目は今回の申請書でもジュゴンへの影響の予測評価が科学性を欠いていることだ。地盤改良のためのくい打ちや工事船舶の水中騒音の最大値を算出し、以前の環境アセスで予測された最大値よりも小さいので「影響なし」と結論付けている。アセスの不備を無視した乱暴な論理だ。

 また使用されるくいの本数や太さ、1日何本がどこに打ち込まれるのかなどの情報、これまでの工事の水中騒音の実測データもないまま予測評価が行われている。基本情報を欠いた影響評価はあり得ない。

 さらに国際基準である累積的影響の検証が欠落している。最大値の騒音のみが影響を与えるのではなく、騒音が長期間続くことや、工事船の航行などの要因と関係することで累積的影響は生まれる。それを無視した評価を認めることはできない。

 3点目として、県による米政府や国際社会への情報発信の必要性を強調したい。日本政府は米国政府に対して建設推進のための情報発信を巧妙に行っていることが米国ジュゴン訴訟で明らかになっている。

 知事は設計変更手続きの進捗(しんちょく)状況や変更に対する県の立場、見解を在沖米軍と米国領事館、米国防総省、連邦議会に積極的に伝えていくことが必要だ。それが米政府や国際社会に沖縄の理解者を生み、基地建設阻止につながる。