<識者の目・辺野古変更申請>鎌尾 彰司氏 現有機械で改良不可能 安全性、防衛省に説明責任


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鎌尾 彰司氏 (日本大理工学部准教授)

 辺野古基地の設計変更の概要が提出された。埋め立てが行われる大浦湾は絶滅危惧種262種を含む5800種以上の生物が確認されている多様な生態系が確認されている場所である。また、世界的に見ても自然の宝庫とされる貴重な海で、2019年にホープスポット(貴重な海)に世界的な環境団体から認定を受けている場所でもある。

 辺野古基地の東側護岸が建設される場所は大浦湾内で海底までの水深が30メートルと深くなっており、ここにコンクリート製のケーソン護岸を設置するために土砂投入による埋め立てが先行して実施されることになる。

 当初の設計では海底地盤は硬い砂礫(されき)層となっており、地盤改良の対象ではなかった。その後の地盤調査の結果で支持地盤が深い谷地形になっており、海底地盤は硬い砂礫層ではなく軟弱な粘土と砂の沖積(ちゅうせき)層と呼ばれる比較的新しい時代の土砂が堆積していることが判明した。建設工事にあたっては地盤改良が必要だ。

 沖積層が最も厚く堆積しているとされる場所の設計で用いている地盤の強度は、その場所で採取(サンプリング)された土の強度試験結果から求めたものでなく、数百メートル離れた別の場所での試験結果を用いたものとなっている。両地点は同一の地層ではない可能性も指摘されている。別の研究者は、震度1~2程度のそれほど大きくない地震でも護岸が崩壊する可能性があるとも指摘した。

 心配は護岸の崩壊だけでない。地盤改良が必要な深さは海底面から60メートル、海水面からでは実に90メートルになる。わが国の現有の施工機械では必要な深さの改良が不可能である。改良ができない部分の20メートルには粘土が堆積しており、埋め立て工事等により大きな沈下がゆっくりと進行することになる。工事後も残留沈下がずっと続くと考えられる。

 我々土木技術者(シビル・エンジニア)には、設計や施工等における不安を取り除くためにしっかりとした調査を実施して、工事が安全に進められることを説明する責任が求められている今日、防衛省には丁寧な対応が望まれる。防衛省は申請書より詳しい設計書を持っているはずなので、それを基に関係機関と協議を進めてほしい。 (地盤工学)