<識者の目・辺野古変更申請>立石雅昭氏 頻発地震を無視、活断層調査足りず


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立石 雅昭氏(新潟大名誉教授)

 沖縄防衛局による辺野古の埋め立て工事計画は空港として求められる機能・性能を将来的にも担保していない。今回の申請は国土交通省による空港基準であるレベル2地震動による「照査」を避け、レベル1地震動で設計している。

 レベル2地震動は、当該地点に襲来する可能性のある最大級の地震を選定しなければならない。

 日本列島の対象地点で発生し得る地震は、プレート境界型と活断層による地震を検討しなければならないが、沖縄本島東方では、巨大地震が発生する可能性が高い。また、埋め立て予定地内には陸域から続く活断層が走る可能性について、これまでも調査団として指摘してきた。仮に空港基準で求められるレベル2地震動ではなく、米軍が認めているとするレベル1の地震動で設計するとしても、当該地域を襲い得る地震動の推定の基本は守られるべきだ。

 しかも防衛局が行ったレベル1の地震動推定方法は、沖縄近海で頻繁に発生する太平洋側での地震を無視し、埋め立て地内の活断層調査もおざなりだ。地震動や地震波の伝搬過程を検討するため、2008年、09年に沖縄本島北西側で発生した小規模地震だけを調査の対象とし、実際に10年2月に沖縄本島南東沖で発生したマグニチュード7・2の地震動を無視するという恣意(しい)的な矮小(わいしょう)化をしている。また、防衛局が行った反射法地震探査記録は、埋め立て予定地内を走る活断層の可能性も示している。

 地震は地下での岩盤の破壊で発生し、途中の岩石や地層を伝わって地表に地震波として到達する。途中、地震波が通過する岩石や地層の性状や分布により、同じ規模の地震でも対象地点によって揺れが異なる。様々な方位からいくつもの地震の伝わり方を解析して、地震波の伝搬・増幅過程を明らかにすることが求められる。今般の申請内容は構造物の耐震設計の基本を無視している。全面的な改訂を求める。
 (地質学)