授精師の免許取り消し 和牛血統不一致問題 県が行政処分


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久米島町内で飼育されている和牛(資料写真)

 久米島町内の家畜人工授精師の男性が種付けした牛で血統不一致が相次いだ問題で、県は18日、男性に対して行政処分を通知し、家畜人工授精の免許を取り消した。県内で人工授精師に対する免許取り消しは初めて。20年3月に、男性が種付けした「安福久」の血統牛でDNAが一致しないことが発覚。県はその後、聞き取り調査などを進めてきた。台帳の管理や精液の管理がずさんで「家畜人工授精師の適格性に欠ける」として、処分を下した。

 県は11日に行政処分検討委員会を開き、処分を決定した。処分理由として、家畜改良増殖法15条が定める人工授精簿の記載義務違反(同1項)と保存義務違反(同2項)に該当すると判断した。処分は免許の取り消しのほか、精液を管理するための授精所の開設許可も取り消した。

 県が行うDNA検査で、男性が種付けした牛550頭のうち、1割に当たる56頭で血統不一致が判明している。県によると血統不一致が見つかった56頭のうち13頭は、授精を依頼した農家が牛を取り違えたことが原因だった。残り43頭は、男性の授精作業によって不一致が生じたとしている。故意性の有無は確認されていない。

 県は今回の行政処分に当たり、「県家畜人工授精業務にかかる行政処分取り扱い要領」を作成して処分基準を定めた。男性は台帳記録の記載漏れなど授精業務に不備が多く、現時点で56頭の不一致が発生していることから、4段階の処分のうち最も重い「免許取り消し」に至った。

 県は8月、県内全域での再発防止策の一環として家畜人工授精業務の手順を示したマニュアルを作成。授精簿などが適正に管理されているかなどを確認するため、家畜人工授精師への抜き打ちの調査も行っている。県畜産課の久保田一史課長は「久米島だけでなく血統不一致は各地で出ている。今回のような事例があれば行政処分要領に応じて対応したい」と話した。