<識者の目・辺野古変更申請>安部真理子氏 工事、科学的検証なし 土砂移動、自然の負担甚大 


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 辺野古・大浦湾のサンゴ礁の海には5334種の生物がすみ、生物や地形が豊かで多様であることが知られている。環境アセスメント後も新種や日本初記録種が記録され、珍しい洞窟の存在も明らかになった。本来なら優先的に保護されるべき場所だ。

 今回の申請の第1の問題はこれまでの工事や作業の影響が科学的に検証されていないことだ。大型コンクリートブロックが300個近く海に沈められたことによる海流の変化、問題の多い方法でのサンゴや海草の移植、貝類や甲殻類の移動などが生物に及ぼす影響が検証されていない。水質の劣化、騒音などが継続的に海の生物へストレスを与えてきた累積的影響も考慮されていない。例えば水の濁り自体は低濃度でも、影響が累積することでサンゴなどの生存に影響が及ぶことが考慮されていない。

 第2の問題は埋め立て土砂の調達予定地だ。今回の申請では当初は予定になかった八重山諸島などの離島や沖縄島中南部からも土砂が調達可能かどうかが検討されている。土砂の移動に伴う問題の一つは外来種の侵入リスクが増えることだ。2016年に世界最大の自然保護団体であるIUCNから日本政府に出された勧告では、「明確な生物地理学的な区域を超えた物資の移動は外来種の侵入のリスクを高める」ことに注意するようにと書かれている。県は県外からの土砂の移動を土砂条例で規制しているが、「県境」は人間の都合で作られたものだ。八重山諸島や南大東島などから調達すれば県条例は免れるかもしれないが、沖縄島とは異なる自然を持つ島々からの調達は外来種侵入のリスクを高める。

 土砂移動に伴う第2の問題は土砂採取地の自然破壊だ。一つ一つの採石場の規模は環境アセスメントにかけるほどの大きさではないこと、そして採石業者が責任を取ることとされているため、大量の土砂を取られる場所への影響を考慮しなくても工事は進められることになる。

 沖縄の島々の自然環境は脆弱(ぜいじゃく)だ。大量の土砂を取られることにも、持ち込まれることにも耐えられない。既に及んでいる影響とこれから及ぶ影響を考慮すると、島々への負担は甚大なものになる。

(日本自然保護協会主任)