平和学習、まずは足元から コロナ禍で県外派遣中止の生徒ら 北谷町が地域の戦跡巡り


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 【北谷】新型コロナウイルスの感染拡大で長崎や広島への平和学習派遣事業が各自治体で中止・延期される中、北谷町は19日、派遣予定だった生徒を対象に県内戦跡のフィールドワークを実施した。町は本年度、平和推進事業費を増額して沖縄戦体験継承への人材育成に力を入れており、生徒たちも今後は町の平和事業の取り組みを担う。生徒たちは「地元を深く学べる良い機会だ」と語り、戦跡の説明を受けながら熱心にメモを取っていた。

北谷町砂辺の自然壕「クマヤーガマ」で、戦時中に同壕に避難していた与儀正仁さん(左端)の話を聞く生徒ら=19日、北谷町

 派遣事業は、広島と長崎の原爆投下日に合わせ、町内の中高校生らが現地を訪れ、意見交換会や交流会などに参加する。本年度も8人が参加予定だったが、新型コロナウイルスの影響で実施されていない。

 19日のフィールドワークでは、米軍上陸地や一部返還された米軍キャンプ瑞慶覧内の特攻艇秘匿壕、町砂辺のクマヤーガマなど町内5カ所の戦跡と糸満市の平和祈念資料館などを巡った。クマヤーガマでは戦時中に避難していた与儀正仁さん(87)が当時の様子を振り返り「戦争は兵隊の殺し合いのみならず、住民も巻き込む悲惨で残虐なもの。皆さんには忘れないでほしい」とかみしめるように語ると、生徒たちも深くうなずいた。

 中学に続き2度目の派遣予定の北谷高校1年の濱里桃榎さん(15)は「沖縄戦は過去の出来事ではなく、繰り返さないためにどうすればいいのか。地元での学びこそ大事だと感じた」と語った。

 桑江中2年の新城優太朗さん(13)は「今日の勉強でさらに学びたい気持ちが大きくなった。戦争のことを話す時に暗い顔になる祖父の心に少し触れられた気がした」と話した。

 町は新型コロナウイルスの感染状況を踏まえながら、広島・長崎へは2月の派遣を予定している。

(新垣若菜)