人の命が大事、「密」避けられない… コロナで伝統行事の中止・縮小 地域に落胆広がる


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
竹富島の種子取祭「タナドゥイ」(資料写真)

 古くから住民同士らの絆を深め、地域に根付く豊年祭などの伝統行事が、新型コロナウイルスの影響で相次いで中止や縮小などを余儀なくされている。主催する自治会の関係者からは「踊りの稽古や化粧はどうしても『密』にならざるを得ない。(奉納芸能の)中止は仕方ない」(名護市山入端区)など残念がる声が上がる一方、「伝統を絶やすことはできない」(宜野湾市大謝名区)と豊年祭は中止し、関係者のみで獅子舞などの実施を決めた自治会もあった。

 「残念だが、人の命が大事だ」。10月8~16日に開催予定だった「竹富島の種子取祭(タナドゥイ)」。600年以上も前から続く祭りは国の指定重要無形民俗文化財に指定されており、島民だけでなく島出身者、観光客が集まる島最大の伝統行事となっている。しかし今年は拝所での拝みなど神事のみになった。内盛正盛竹富公民館長は「島民が少ないので島外の人の協力はどうしても必要になるが、感染リスクがある中で毎日練習したり、祭りで人が集まったりするのはなかなか厳しい」と吐露する。

 八重瀬町富盛は新型コロナウイルスの影響で青年会エイサー、十五夜(豊年祭)、3年に1度の綱引きが中止に。大城次好富盛区長は「綱引きや十五夜は子どもから高齢者が集い、富盛出身者も帰省するなど1年で最大の行事だった。非常に残念だ」と声を落とす。「練習も含めどうしても密になってしまう。高齢者も多いのでコロナ禍では中止はやむを得ない。命あっての行事だ」としつつ「来年は今年の分も含めて盛大に実施したい」と新型コロナの終息を願った。

 名護市では羽地村や名護町、久志村など合併前の旧市町の各字で戦前から続いてきた豊年祭などの伝統行事が相次いで縮小になった。川上区の平レイ子区長は「毎年、かぎやで風や獅子の先導役などを小学6年生に任せていたが、この子たちがその役を経験できないまま中学に上がってしまう」と子どもたちの心情をおもんぱかる。「今年は拝みのみになったが、これまで祭りに関わってきた子どもたちが将来的に区の中心になって伝統を継いでくれるはずだ」と期待した。