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ジュゴン、辺野古工事から逃げる? 「鳴き声」コロナ休工中に増加


ジュゴン、辺野古工事から逃げる? 「鳴き声」コロナ休工中に増加
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に関し、2月以降、工事現場周辺でジュゴンの鳴き声とみられる音が度々記録されている。工事を止めていた4、5月に音声の検出回数が増え、工事を始めた6月から減少した。休工期間以外も鳴き声らしき音が確認されているのは、工事をしなかった日が多い。識者らは「ジュゴンが工事を避けている可能性が高い」と指摘している。

 沖縄本島北部の海域ではもともと、ジュゴン3個体が確認されていた。工事が始まってから現場近くでジュゴンの姿が見られなくなった。2018年11月の食べ跡を最後に痕跡さえ確認されなくなっていた。19年12月には、国際自然保護連合(IUCN)が南西諸島のジュゴンを「近絶滅種」と位置付け、国や県に対応を促した。

 沖縄防衛局が工事現場の海中に設置した録音装置で鳴き声とみられる音が記録されたのは今年2月の11、23、24日で、いずれも工事は休みだった。防衛局は調査を拡大しているが、鳴き声以外の手掛かりは見つかっていない。ただ、防衛局によると、専門家は周波数や持続時間からみてもジュゴンの可能性が高いと分析している。

 鳴き声とみられる音が録音されたことを受け、県は防衛局に工事を止めるよう指導した。ジュゴンへの工事の影響について改めて確かめるよう求めた。防衛局は従わなかったが、工事関係の新型コロナウイルス感染者が出ると4月17日から順次、工事を止めた。4、5月に鳴き声らしき音が検出されたのはそれぞれ74回、70回だった。

 県は引き続きジュゴンの動向に注意を払うため工事を止めたままにするよう求めていたが、防衛局は感染症対策が整ったとして6月12日に工事を再開した。6月に鳴き声とみられる音が確認されたのは、日曜日で工事をしていなかった21日のみで、7月は検出されなかった。

 ジュゴン保護キャンペーンセンター国際担当の吉川秀樹氏は、鳴き声調査の結果について「合理的に考えれば、工事がジュゴンに影響している可能性が高い。まずは工事を止めて検証すべきだ」と語った。

 名桜大の桜井国俊名誉教授は「ジュゴンの鳴き声かどうかは判断できないが、少なくとも工事を止めて行方不明となったジュゴンについて検証すべきだ」と指摘した。
 (明真南斗)