「再開」の旋律、会場包む 琉球交響楽団が1年ぶり定期演奏会


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バッハの「管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067」を弦楽合奏とともに演奏するフルート奏者の眞榮田えり子(左手前)=12日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホール

 琉球交響楽団の第38回定期演奏会が12日、沖縄県浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホールで開かれた。フルート奏者の眞榮田えり子をソリストに、バッハ「管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067」を、ベートーベン「交響曲第5番 ハ短調 作品67『運命』」を披露。定期演奏会は約1年ぶりの開催で入場者を会員に限定し、約150人の観客が訪れた。気迫あふれる演奏に拍手喝采がわき起こった。指揮は大友直人、コンサートマスターは阿波根由紀(バイオリン)が務めた。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、オーケストラ形式での演奏は約半年ぶり。感染予防対策が施される中、演奏活動再開に向けた大きな一歩となった。

 幕開けはバッハの「管弦楽組曲第2番」。全7楽章で構成される本作は、協奏曲のようなフルートの独奏パートも印象的な作品だ。第1楽章は「フランス風序曲」から始まり、フルートと弦楽合奏が交互に旋律を奏でた。音域が複雑に重なり合い、とりわけ中立音に美しさを感じた。第2楽章では、異なる旋律を挟みながら、同様な旋律を繰り返すロンド形式で軽快に楽しませた。

大友直人の指揮で、ベートーベン「交響曲第5番 ハ短調 作品67『運命』」を演奏する琉球交響楽団=12日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホール

 第3楽章は荘重な音色を奏で、第4楽章はテンポの速い展開で対比的に聴かせた。第5楽章のポーランドの舞曲「ポロネーズ」では大友の指揮で変化に富んだ音色を奏で、フルートの華やかさも感じられた。最終楽章「バディネリ」は弦楽器のはじくような伴奏に眞榮田の駆け抜けるような爽快な音色が響き、会場からの拍手が鳴り響いた。

 ベートーベン「交響曲第5番 ハ短調 作品67『運命』」は、「暗から明へ」という構成で、激しい葛藤や瞑想(めいそう)、歓喜が解き放たれるような曲想が心をつかんだ。

 指揮を務めた大友は「近年の定期演奏会では楽団創立以来の県内在住メンバーのみによる小編成の演奏会となったが、新鮮さも感じられた」と公演を振り返った。

 一方で依頼公演などオーケストラの演奏会は激減している状況だという。「(オーケストラは)常にチームプレーで恒常的に演奏することが非常に大切。少しでも多くの演奏機会が増えることを願っている」と話した。
 (田中芳)