『共同売店の新たなかたちを求めて』 地域福祉、情報交換の場として


社会
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『共同売店の新たなかたちを求めて』沖縄国際大学南島文化研究所編 編集工房東洋企画・1650円

 「共同売店」(共同店)は、明治の末、沖縄本島最北の奥集落に生まれ、山原各地に広まり、それが中南部や離島、そして宮古・八重山にまで及んだ。基本はへき地で交通の便が悪く、集落の生活を維持するために、つまり自己防衛のために一致団結して作り出した共同組織だ。それは「売店」に代表されるが、奥のように製茶工場や泡盛工場を持つものもあり、集落の運営と深くつながっている。

 その後の社会の変化・発展の中で、淘汰(とうた)を余儀なくされたものもあるが、しっかり残っているものもあり、見方によっては「発展」しているものさえある。この沖縄に特徴的な共同売店について、本書はその基本から歴史(経過)、そして現状に至る一切を描き出している。そのため、このテーマに関わるこれまでの主要な文献を収録し、また、近年の「新しい視覚」からの議論も加えて共同売店の「総合的研究」の書としたものである。ただ、それはある意味で玉石混交でもあり、評者からは受け入れがたいものが含まれてもいる。読者にも批判的に読むことをお勧めする。

 編集委員の代表である宮城能彦(沖縄大学)の「解題」は要領がいい。そこでは共同売店研究(史)を3つの時期に区分している。第1期は戦前から戦後の前半の時期である。資本主義経済の中で古い村落がどのようにのみ込まれ、あるいは対抗していったかに関心を示した。

 第2期は、1980年代前半の時期である。沖国大南島研の安仁屋政昭・玉城隆雄・堂前亮平がチームを組んで、ほぼ沖縄全域を網羅した調査結果を公表したものに代表される。第3期は、2000年以後の時期である。ここで共同売店の「新たなかたち」、その評価が前面に出されてくる。経営的には困難を抱え続けていることに変わりはないが、生活、それも消費生活というのではなく、高齢者の比重の高い集落を「高齢者のために続ける」という、地域福祉的な機能、情報交換の場としての共同売店への注目である。このことは県外の研究者の参加もあって、力を増している。

 今後も一層の調査・研究が広まり、深まることを期待したい。また、共同売店の一層の奮闘も期待したい。

 (来間泰男・沖縄国際大学名誉教授)

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 沖縄国際大学南島文化研究所 研究センターと資料センターの役割を持つ機関。学際的な共同研究の場として1978年4月に設立。琉球弧の島々を対象にした学問研究を目指す。本書の編集委員の代表で解題などは宮城能彦沖縄大学人文学部教授が担当。