エビ大量死「病気と思わなかった」 養殖場代表、検疫クリアで疑わず


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国内で初確認となるエビの特定疾病「急性肝膵臓壊死症(ANPHD)」が発生した養殖場で処分されるバナメイエビ(県水産課提供)

 エビが感染する特定疾病「急性肝膵臓(すいぞう)壊死(えし)症」の発生が確認された大宜味村のバナメイエビ養殖場では19日、白い防護服姿に身を包んだ県や養殖場の職員が、屋外施設の周辺で作業する様子が確認された。

 養殖場を運営する事業所の代表者は、琉球新報の電話取材に「水質の悪化や共食いなど、養殖経験が浅いことによる不手際から多くを死なせてしまったと思っている」と話した。

 同社は2019年に設立。8月にタイの大手水産会社から10万尾の養殖種苗(稚エビ)を輸入した。

 代表者によると、タイの企業からは7月ごろに、当初輸出予定だった稚エビについて「検査でエラーが出たので出さない。別の稚エビを解析して、大丈夫なものだけを出す」と連絡があった。「エラー」の具体的な内容については確認していないという。

 その後、8月に輸入した稚エビは、タイの企業のPCR検査、成田空港に到着した際の日本側の検疫という段階を経て、那覇空港から大宜味村に運び込んだ。 代表者は到着時の様子を「全てのエビが生きていて元気が良かった」と振り返り、「検査や検疫をクリアして入ってきているので、病気はないと思っていた」と声を落とした。

 屋内の水槽で稚エビを飼育し始めた後、多くのエビが死んだ。

 水槽ごとに生育の状況が違うことから病気とは思わず、水質悪化や給餌間隔が空いたことによる共食いの可能性が高いとみて対応を模索していたという。

 県に報告書の提出が遅れたことについては「少ない人数で、目の前の作業が中心になって遅れてしまった。手書きの報告書を整理して、まとめて出すことで調整していた」と話した。

 約2千尾が大きく育ったことから、11月にも県外の飲食店を対象にしたプロモーションを始める予定だった。

 来年からの本格出荷に向けて今月17日に再びタイから稚エビ10万尾を輸入する予定だったが、感染疑いを受けて急きょキャンセルした。

 代表者は今後について「事前のPCR検査や検疫で病気を見つけられなかった責任の追及に時間を割くつもりはない。消毒、水づくりをしっかりして、できる限り早く再開したい」と話した。