【島人の目】コロナ禍中の危険な遊び


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 欧州は新型コロナの第2波に見舞われている。そんな中でも猟師はせっせと狩りに出る。欧州の多くの国では、狩猟解禁時期は毎年9月。新年を跨(また)いで2月頃まで続く。ここイタリアの狩猟シーズンも9月からの約5カ月間。フランスも似ている。

 一方、狩猟大国のスペインは春にも狩猟シーズンがあり、1年のうち9カ月間は国中の山野に銃声が響く。スペインの狩猟は、長い解禁期間や獲物の種類の多さで動物愛護家などに強く批判される。だがそれはフランスやイタリアも同じ。欧米の一般的な傾向は銃を振り回して野生動物を殺す狩猟に否定的だ。狩猟が批判されるもう一つの原因は誤射が後を絶たないこと。猟師自身や一般人が撃たれる事故が多い。

 批判にもかかわらず狩猟は盛況を呈する。経済効果が高いからだ。例えばスペインの狩猟ビジネスは12万人の雇用を生む。狩猟用品の管理やメンテナンス、貸出業、保険業、獲物の剥製業者、ホテル、レストラン、搬送業務など、さまざまな職が存在するのだ。

 スペインは毎年、世界第2位となる8000万人以上の外国人旅行者を受け入れる。新型コロナが猛威を振るう2020年は、その97%が失われる見込みだ。大打撃を受ける観光業にとっては国内の旅行者である狩猟客は頼みの綱の一つ。2020年~21年の狩猟シーズンは盛り上がる気配があるが、それは決して偶然ではないのだ。

 スペインほどではないがここイタリアの狩猟も、またフランス他の国々のそれも、盛況になる可能性が高い。過酷なロックダウンで自宅待機を強いられたハンターが、自由と解放を求めて野山にどっと繰り出すと予想されているのだ。そうなれば人々は、コロナウイルスに加えて銃弾の危険にも多くさらされることになる。

 (仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)