世界のウチナーンチュの日制定から4年 県系人ルーツ考える日に 寄稿・安里玉元三奈美


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ボリビアで「世界のウチナーンチュの日」を記念して行われた島唄カラオケ大会=2018年

 10月30日は「世界のウチナーンチュの日」。世界27カ国から過去史上最多の約7400人が参加した第6回世界のウチナーンチュ大会(2016年)の閉会式で、故・翁長前知事と県系3世の2人のアンドレスによって宣言された。世界のウチナーンチュの日は海外に住む県系人にとってどのような形で浸透しているか、次大会の課題や今後の展開は。

 制定から4年が経過し、現在では世界各地で様々(さまざま)な祝いの催しが毎年この記念日を中心に開催され、年々、盛り上がりを増している。

 昨年は、県内市町村ではパネル展やイベント、海外の沖縄県人会でも様々な催しが展開され、ハワイでは一品持ち寄りパーティーやワークショップ、フロリダ州ではピクニック、ブラジルでは三線や舞踊、エイサーの沖縄文化を披露するイベントが行われ、毎年やってくる記念日は、海外に住む県系人にとって沖縄のアイデンティティーやルーツを考える日になっている。また、記念日が5年に1度の開催である次の「世界のウチナーンチュ大会」までの4年間を埋める盛り上がり、取り組みにもつながっている。

 制定日から4年目。今年は新型コロナウイルスの影響により世界各国でイベント開催に制限がかかる中、来年予定の「第7回世界のウチナーンチュ大会」は再来年に延期された。コロナ禍はメリットかデメリットかといわれると、私はメリットと捉える。

 海外の県人会や若者の団体はオンラインイベントを計画し、インターネットやSNSなどを通して参加を呼び掛け、国境を越えた交流や活動で沖縄の文化を知っていく取り組みが生まれている。

 ボリビアでは、若い世代が中心となってプロジェクトを立ち上げ、伝統文化に触れる機会を同世代の若者に提供。うちなーぐちの会話や言葉をクイズで楽しく学び、世界のウチナーンチュの日やアイデンティティーに関する質問を投げかけたディスカッションを行うなど、世界各国の若者らと楽しく繋(つな)がりながら、アイデンティティーを深めた。

 ペルーでは、帰国研修生で構成された若者団体が沖縄で活躍する若者を講師とし、空手、琉球と沖縄の歴史、うちなーぐち、琉球舞踊の化粧の仕方を学ぶオンライン講座を今月と来月の2カ月にわたり実施している。今までだと、沖縄に関する講座などは講師の旅費や滞在費を捻出して行うのが当たり前だったが、オンラインとなったことで費用削減にもつながり、イベントが開催しやすくなっている。

 オンラインが主流となった現在、さらに大きなメリットは、世界中のどこからでも参加ができることだ。沖縄に足を運ばないと見られなかった舞台や演劇、ライブがインターネットを通して自宅で楽しめる。足腰が不自由な高齢者、仕事や子育てで忙しい親や若者、学業に励む学生にとって沖縄に行くことが難しかった/難しい世代が、自宅にいながら楽しめ、沖縄の歴史や文化を学べるコンテンツにもなっている。また、ハワイ沖縄連合会が去る9月にバーチャル・オキナワン・フェスティバルを実施するなどまさに新しい時代を迎えている。

 再来年はいよいよ「第7回世界のウチナーンチュ大会」。大きな課題は「Withコロナ、Afterコロナをどう乗り切るのか」だろう。これまでとは違った大会になることは間違いないといえる。

安里・玉元・三奈美

 23日、県のサイトで大会実行委員会事務局が「第7回世界のウチナーンチュ大会開催に向けた海外県人会等WEB会議」を実施すると告知した。開催に向け、大会開催の意義やあり方、大会運営について、ウェブ会議システムを活用して、海外県人会から課題や対応策などの意見を大会運営に反映させるようだ。私の要望は再来年の大会をバーチャルでも参加可能としてほしい。

 狙いは、海外や日本本土から参加ができない県系人のためである。前大会は過去史上最多の約7400人が参加したが、海外や日本本土に住む県系人にとって大会は「お金がある人しか参加ができない大会」となっている。南米の中でも最貧困国のボリビアの月給料は5万円以下。アルゼンチンでは物価の上昇で景気悪化、経済危機が続いている。南米だけでなく新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカでは失業率が上昇。世界中で職を失う人が増え、商業施設や飲食店など様々な業種に影響を及ぼした。

 また、参加がしたくてもできない高齢者、仕事や子育てで忙しい親世代、若者のためにバーチャルでも参加可能とし、会場の参加者らと一体となってリアルとバーチャルが融合する大会はどうだろうか。

 バーチャル空間ならではのパレードやビジネスマッチング、舞台や演劇、国際交流、沖縄の文化を学ぶワークショップ、記念グッズの購入もできるのではないだろうか。

 さらに、バーチャルは県民への周知にも効果的だ。ウチナーンチュ大会への県民参加が少ないと前大会で課題に挙がったが、大会会場に入りきれない県民も多かった。県や市町村、国際交流団体の取り組みのおかげで、海外に住むウチナーンチュの存在や大会の認知度も高まりつつある現在、幅広い世代の県民参加が見込め、さらなる拡大につながる。

 沖縄から海外移民が始まって100年以上。「第1回世界のウチナーンチュ大会」が開催され約30年。その間に、沖縄と海外をつなぐ交流事業や人材育成事業、教育現場での移民学習、世界若者ウチナーンチュ大会など若者の取り組みも生まれ、海外ネットワークが構築されてきた。10年前は海外県人会同士の横の繋がりも、若者間のネットワークもない時代だったが、インターネットやSNS上で簡単につながれるようになった。

 ネットワークが構築され、簡単に繋がれるようになった今、今後の課題は、そのネットワークをどう活用するかである。

 これまでの事業の継続に加え、観光や物産、ビジネス、スポーツ分野など他分野・他業界で活用し、「沖縄独自の海外ネットワーク」へと発展させること、SDGsなどの取り組みの展開で持続可能な継承、発展を目指す必要があると考える。

 その点を踏まえ、毎年の「世界のウチナーンチュの日」、「世界のウチナーンチュ大会」が今後の沖縄の発展につながることを期待したい。

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 あさと・たまもと・みなみ 2011年に県系子弟の若者をつなぐネットワークを構築、世界若者ウチナーンチュ連合会を設立。世界若者ウチナーンチュ大会を世界各地で開催。その傍ら家系図や家族史・自分史の制作会社の代表も務める。2015ミスうるま。著書に「刻まれた21センチ」。ボリビア在住3年、1児の母。