2020年秋の褒章 沖縄県内から5人が受章


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 政府は2日付で2020年秋の褒章を発表した。発令日は3日。沖縄県内の受章者は男性2人、女性3人の計5人。商業、工業などの業務に精励した人に贈られる黄綬褒章が2人、公共の利益に尽力した人に贈られる藍綬褒章が3人だった。県内受章者の功績や喜びの声を紹介する。

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好きが仕事の原動力に 黄綬 航空機整備業務 奥間政慶さん(60)

奥間政慶さん

 

 「多くの機種の整備に携われる。航空整備士として、たまらないほどの環境だった」。南西航空時代からの38年間を振り返り、機械いじりが大好きな少年時代に戻ったかのように満面の笑みを浮かべた。

 幼いころから、おもちゃの中身を見たいと分解するほど、機械が大好きだった。「どうせなら大きな機械がよい」と航空機整備の道を志した。

 入社3年目でYS11の整備資格を取得したことを皮切りに、合計6機種の整備資格を所持している。他社で発生した事故やトラブルなどを常に研究し、自分ならどうやって解決するかを考え続けた。天皇皇后両陛下の行幸啓(ぎょうこうけい)に使用する機体や政府専用機の整備など、大舞台でも腕を振るってきた。

 好きであることが仕事に打ち込む原動力に。「本当に夢中になれることを、何か一つでも見つけられたら幸せだ」と熱く語った。

 おくま・まさよし=60歳。元日本トランスオーシャン航空品質保証部品質保証課専任課長
 

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「宮古上布」次代に継承 黄綬 文化財保護業務 平良清子さん(82)

平良清子さん

 

 織機に初めて触れたのは16歳だった。「母親が上布の製織をしていたから自然と作るようになった」。見よう見まねで始めて66年。受章に「びっくりした。ありがたいこと」と笑った。

 「宮古上布」は琉球藍の深い青に染められた細い苧麻(ちょま)糸が織りなす精緻な模様で、見る者を魅了する。国指定重要無形文化財の高級上布は十数センチ織るたびに、ずれを修正する。細かい作業を黙々と積み重ねて完成する。

 「模様をきれいに出すのは本当に難しい。簡単だと思ったことは一度もない」。それだけに織り上がった布を見る時が「一番楽しい瞬間」だ。

 宮古上布は琉球藍や苧麻糸などの原料、後継者の不足などから生産量減少が続く。島の伝統を守るためにと、後継者育成にも力を注ぐ。「教わったことを教わった通りに伝えている。若い人も楽しみながら取り組んでほしい。私も元気なうちは作り続けたい」と笑顔を見せた。

 たいら・きよこ=82歳。宮古上布製作技術者

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沖縄の食文化、魅力を発信 藍綬 生活衛生功績 鈴木洋一さん(65)

鈴木洋一さん

 

 静岡県で生まれ育ち、母の故郷の沖縄には日本復帰前からたびたび訪れていた。今では老舗の「ピザハウス」や「チャーリー多幸寿」に出合い「味わったことのなかった食文化に衝撃を受けた」と振り返る。

 高校時代に父が急逝し、母と沖縄に移った。母は親族と那覇市松尾の旧リウボウでファミリーレストランを経営し、法政大卒業後に自身も加わって飲食業の道を進んだ。前身の県飲食業環境衛生同業組合との関わりは90年代半ば、當山政順理事長(ステーキハウス四季社長)に誘われたことがきっかけで、組合の地位向上に励んだ。

 2014年、當山氏から理事長を引き継いだ。組合は昨年40周年を迎え、沖縄で全国大会も開かれた。今年は新型コロナウイルスの影響が直撃しているが「一致団結して乗り越え、沖縄の食文化を後世に伝え、魅力を県外に発信したい」と意気込む。

 すずき・よういち=65歳。県飲食業生活衛生同業組合理事長

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自然体で対話重ねる 藍綬 更生保護功績 積靜江さん(76)

積靜江さん

 

 「大阪生まれのおせっかいおばさん」。20年間、保護司の活動を続けてきた自身をこう称する。大阪で生まれ育ち、結婚をきっかけに沖縄へと移住した。主婦業の傍ら、長年にわたり母子保健推進員として活動し、全国母子保健推進員等連絡協議会長も務めた。豊富な経験を買われ、沖縄市役所職員から保護司の推薦を受けた。

 モットーは「気張らずに自然体でいること」。県内外の刑務所や少年院に何度も足を運び、対象者との対話を重ねた。10代の女性の社会復帰を支援した際、親しみを込めて「ママ」と呼ばれ、やがて結婚式にも招待された。「保護司冥利(みょうり)に尽きる出来事だった」

 今年11月中での引退を決めた。受章について「周囲に支えられたおかげだ」と感謝し、後輩たちに思いを託す。「最初は試行錯誤だと思う。気負わずに自分のペースで経験を積み重ねていってほしい」

 せき・しずえ=76歳。保護司

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対象者を信じ環境改善 藍綬 更生保護功績 宮里イネ子さん(75)
 

宮里イネ子さん

 

 薬物乱用防止指導員でもあり、保護司としては麻薬など薬物に手を出してしまった対象者と接することが多い。中には中学生もいて難しい案件もあったが、常に明るく接し、環境改善に努めてきた。受章の知らせには、「保護司は奥が深く、自分はまだまだです」と謙遜した。

 周辺からの誘いが幾度かあり、1996年2月に保護司となった。

 長男は警察で、三男は裁判所で働く。息子たちが関わる偶然の出来事があり「思い出の一つ」と振り返る。本島中部地域の5市町村をまとめる中部南保護区保護司会で、事務局長を10年務め視野も広めた。

 対象者の言葉を信じ、良いところを引き出すことを心掛けてきた。「対象者は感受性や個性は強いが、環境が良くなれば将来は楽しみになる」と強調する。

 保護司として残された数年の任期を「最後までやり通したい」と固い決意をのぞかせた。

 みやざと・いねこ=75歳。保護司