戦後の琉球古典音楽安冨祖流隆盛の基盤を築いた宮里春行師匠(1911~92年)の制作した三線2丁が10月28日、琉球古典音楽の人間国宝・照喜名朝一さんと息子の朝國さんに寄贈された。春行師匠の息子の宮里辰秀さんと、友人の宮城英典さんらの協力の下、来年卒寿記念公演を控える朝一さんへの激励と、朝國さんの2019年度文化庁芸術祭音楽部門優秀賞受賞を記念して贈られた。
寄贈された三線は春行師匠が琉球政府に務めていた頃に、営農指導のために訪れた八重山で仕入れた黒木を成形して、1950年代頃に作られたとみられる棹(さお)が使用されている。
昨年、春行師匠が制作した棹などが辰秀さんの姉の自宅で保管されていたことが分かった。春行師匠の直弟子に寄贈をしてほしいとの意向で、直弟子の朝一さんが棹をじかに触って選び、三線が贈呈された。辰秀さんは安冨祖流に今後も三線を寄贈する。辰秀さんは「三線が指導の育成や安冨祖流のためになればと思う」と話した。
三線を受け取った朝一さんと朝國さんは「御前風(ぐじんふう)」の5曲を演奏した。奏でられる美しい音色を辰秀さんと英典さん、朝一さんの妻の栄子さんがじっくりと聴き入った。辰秀さんは「おやじの芸歴45周年の記念独演会を思い出した」と感嘆した様子で喜んだ。朝一さんは「でこぼこがなくてきれいにされていた。三線はトゥーイ(棹の表面)が命だ」と満足気に話した。 (田中芳)