「沖縄戦75年」新聞記者の役割は…出版記念、那覇でトークイベント


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戦後75年の中で沖縄戦を取材して感じたことを語る琉球新報の記者ら=7日、那覇市のジュンク堂書店那覇店

 沖縄戦から75年の今年の琉球新報での連載などをまとめた「沖縄戦75年 戦火の記憶を追う~記者が沖縄戦取材を語る」の発売記念トークイベントが7日午後、那覇市のジュンク堂書店那覇店であった。連載取材に関わった記者らが取材を通して感じたことなどを語った。新型コロナウイルス感染拡大のなかで迎えた戦後75年、体験者の証言に加えて家族への継承、戦跡だからこそ感じ取れることなど、記者自身が伝える役割について確認した。

 首里城地下の日本軍第32軍司令部壕を取材してきた仲村良太記者は、首里城の焼失も重なったことも挙げ「沖縄戦の実相を伝える象徴で司令部壕公開の議論は今しかないという意義がある」と話した。

 北谷町の戦争遺跡を取材した新垣若菜記者は「戦跡は資料ではわからない、追体験ができるのが一番。戦争が他人事でなく自分事だと落ちてくるのが感じられる」と戦跡を残す意義を語った。

 中村万里子記者は、今年の慰霊の日の沖縄全戦没者追悼式を開催する場所が、例年の平和祈念公園から国立沖縄戦没者墓苑に変更され、再び従来会場に戻った経緯を取材した。遺族にもさまざまな思いがあるとしながらも、墓苑周辺に漂う「戦死者への感謝の思想」は「県民が戦争を体験した思想とは相いれないものだろう」と印象を語った。

 小那覇安剛編集局次長は「第32軍司令部壕は本土決戦を遅らせる戦略持久戦を判断したまさにその場所。沖縄戦の実相とは何だったのかを物語る。戦没者追悼式の会場の場所性を県の中でどれだけ詰めた議論されたのか見えていない」と指摘した。

 トークイベントは、沖縄出版協会ブックフェア開催記念として開催された。沖縄戦に関連して、14日午後3時からも同じ会場で「終わりなき<いくさ>を考える」と題して、琉球新報の藤原健客員編集委員と社会部の阪口彩子記者、佐喜眞美術館の上間かな恵学芸員がトークする。
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