人情劇にチムグクル 喜劇「民宿チャーチの熱い夜」が公演 コロナや首里城焼失をテーマに


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 沖縄の民宿を舞台にした喜劇「民宿チャーチの熱い夜18 第1回沖縄ヒヤミカチ公演」(渡辺熱・作演出)が10月30、31日の両日、沖縄市民劇場あしびなーであった。東京の演劇ユニット「デットストックユニオン」のシリーズ18作品目で沖縄初公演。川田広樹(ガレッジセール)や宮川たま子が沖縄に熱い思いを持つ俳優たちと共演。首里城と新型コロナをテーマに物語をにぎやかに繰り広げ、沖縄の「チムグクル」の精神や「魂(マブイ)」のこもった人情劇を届けた。30日公演を取材した。

「民宿チャーチの熱い夜18」の一場面。宮川たま子(左から2人目)や渡辺熱(同5人目・作演出)、川田広樹(右端)らが出演。さまざまな人情劇を展開する=10月30日、沖縄市民小劇場あしびなー

 東京で働いている青年、金城臣吾(川田)が行方不明になっていると臣吾のいとこ(岩上円香)に電話が入り物語が展開していく。仕事を辞めて東京から戻ってきた嘉手苅カレン(黒木エミー)とカレンを追い掛ける彼氏の佐藤(南大介)、GOTOキャンペーンで沖縄を訪れる観光客や、辺野古の新基地建設現場を見学に来た若者などが次々と民宿を訪れる。

 首里城が焼失して魂(マブイ)を落としてしまった臣吾が、民宿の仲間との交流を通して次第に自分を取り戻していく姿が目を引いた。終盤、自粛期間で会えないまま、祖母を亡くし落ち込むカレンに、臣吾が力強く何度も「魂(マブイ)」を込める場面がとりわけ強く印象に残った。

 民宿チャーチは、渡辺の書き下ろしで毎年、7月に東京で上演している人気作品。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京公演は9月に延期になった。沖縄公演は渡辺や川田の熱い思いで開催が実現した。

 公演終了後、渡辺は感謝の思いを述べ「沖縄公演がやっと実現し感無量です」と伝え、会場は拍手喝采に包まれた。

 渡辺の思いを受け取った川田は「絶対にこの作品をうちなーんちゅに見てもらいたいと思っていたので、この日を迎えられて幸せです。作品を見て、ちょっとでも頑張ろうって思ってもらえたらうれしいです」と観客にエールを贈った。

(田中芳)