<シネマFOCUS>「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」伝説の5人組、唯一無二の才能と葛藤


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 米国のバンド史上、唯一ビートルズに匹敵するバンド。ボブ・ディランが憧れたバンド。名声をほしいままに、あっという間に解散した伝説の5人組バンド「ザ・バンド」の歴史を振り返るドキュメンタリー。

 今年8月にリバイバル上映した音楽ドキュメンタリー『ラスト・ワルツ』は、1976年、彼らの解散コンサートを、マーティン・スコセッシ監督がフィルムに収めた、貴重で美しい作品だった。素晴らしい音楽と、温かい空気に包まれているはずの『ラスト・ワルツ』が、なぜとても切なかったのか、その理由が本作を通し理解できる。

 音楽を愛し、音楽に熱狂し、互いの才能を認め合い、共同生活の中で曲を作っていた彼ら。でもやがて、互いの存在が、図らずも互いを傷つけ、擦り切れていく。ギリギリの精神を酒やドラッグでつなぎとめるメンバーも現れ、そうしながらも生まれる名曲や、彼らが奏でる美しいハーモニーは常に唯一無二。有り余る才能が彼らを壊していく様子に、凡人はただただ胸を熱くするばかり。監督はダニエル・ロアー。
 (桜坂劇場・下地久美子)