県庁職員の新垣泰志さん(33)は、第2子誕生に伴って4月から男性職員としては異例の1年間の長期にわたる育児休業を取得している。育休を取るに当たって職場の同僚の負担が増すことも心配したが、数カ月前から上司に相談したことで、代わりの人員を配置する配慮があった。「ハードルはなく、プレッシャーも感じなかった」。ただ同じく公務員だった父親には驚かれた。「親世代には、男は外で稼ぐものとの価値観があると感じた。共働きが当たり前の中、従来のような『男らしさ』を求める考え方はもう時代にそぐわないように感じる」と語った。 (梅田正覚)
新垣さんの母は専業主婦で、父が仕事で遅くなるのは日常的だった。新垣さん自身も育休取得前は夜遅く帰宅し、土日も出勤した。共働きで育休中だった妻は仕事に理解を示していたが、自身は育児にあまり関われないことに罪悪感があった。
育休取得を考えたのは年子の第2子が生まれることが分かった時だ。「仮に自分が職場からいなくなっても代えが利くが、家庭では代えが利かない。子どもと過ごす時間と仕事をてんびんにかけた時、育休の一択しかなかった」。期間も男性としては異例の長さの1年を選択した。
育休を取得してみて「子どもがどうして泣いているのかが分からず、一人で面倒を見る時は正直、手に負えなかった。仕事している方がよっぽど楽だと感じる男性が多いのではないかと思う」と妻の負担の大きさを痛感した。
男性は「仕事でも恋愛でも勝たないといけない」との社会的な雰囲気を感じる。自身は20代後半まで非正規職員として生きてきて、社会が求める「男らしさ」に息苦しさを感じることもあった。だからこそ「男だから女だから(こうあるべき)と言っても仕方がないこと。時代は変わっていて、それぞれができることをやればいい」と考えている。
今年1月、小泉進次郎環境相が育休取得を表明した際に一部で反対意見もあった。新垣さんは大臣の職責の重さを理解しつつも、反対意見に違和感を抱いた。「もし育休が取れなかったら、制度が存在している意味がない。男性が育休取得に後ろめたさを感じないように、自分は率先して取りたいと思った」。育休取得は社会を変えるための小さな一歩だと考えている。