戦後75年たって明らかになった事実を明記 ひめゆり資料館が全学徒の資料集を改訂


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 ひめゆり平和祈念資料館は、沖縄戦に動員された旧制中学21校の学徒らについて1冊にまとめた「資料集4 沖縄戦の全学徒隊」を、このほど改訂した。これまで「不明」としてきた一部学校の動員数や戦死者数について、新たな調査や既存資料の数を引用し、明記した。執筆した普天間朝佳館長は「『不明』というのは当事者の元学徒たちにとって心が痛いことだったと思う。戦争の記憶を受け継ぐのは今しかないと、痛感しながらの作業になった」と語る。

「ひめゆり平和祈念資料館資料集4 沖縄戦の全学徒隊」改訂版を執筆した同資料館の普天間朝佳館長=16日、糸満市のひめゆり平和祈念資料館

 同資料館は1999年に特別展「沖縄戦の全学徒たち」を実施し、2008年に「沖縄戦の全学徒隊」初版を発行した。改訂版では、県内21校の元生徒らでつくる「元全学徒の会」が18年に調査し直した、各学校の全戦没者数などを反映させた。

 これまで動員数や戦死者数を「不明」としてきた私立開南中について、1959年琉球政府社会局援護課発行の「沖縄戦における学徒従軍記」を引用し、動員数を生徒68人、学徒隊戦死者数を66人と明記した。同資料は、動員数や戦死者数が記された公的機関発行の、唯一の資料だが、不正確な点もあるため、これまでは引用してこなかったという。那覇市立商工も同資料に基づき、生徒動員数を明記した。

 県立八重山中、県立八重山農も、動員数「不明」、戦死者数ゼロとしてきた。改訂版では、それらの人数を国立公文書館所蔵の厚生労働省「学徒名簿 並死亡現認証綴」から引用した。

 改訂版はA4からB5へ小型化し、当時の生徒らの生き生きとした表情の写真に表紙を変更した。

 普天間館長は「元全学徒の会が力を振り絞って調査したことを生かし、できる限りさまざまな資料を反映させた。今の若い世代にも手にとってほしい」と話した。冊子は県内の書店などで購入できる。問い合わせは同館(電話)098(997)2100。