芸能・文化

<書評>『沖縄経済入門 第2版』 県内の実像、冷静に分析

『沖縄経済入門 第2版』宮城和宏・浦本寛史・比嘉正茂監修 沖縄国際大学経済学科編・1650円

 沖縄国際大学経済学部の教授陣によって、「沖縄経済入門」の初版が出版されたのが2014年。6年たった2020年に第2版が出版された。本著の執筆理由は、大学入学以前に沖縄経済の実情について学ぶ機会の欠落を補い、さらに、沖縄に関するフェイクニュースに対して事実を客観的に説明している。

 本著の読みどころは次の5点ある。第1は統計データを用い、沖縄経済の実像を冷静に分析している。実証研究の書籍は対象者である大学1年生には難しい印象を持たれるが、統計表やグラフへの解説をふんだんに用い、初学者も理解できる内容だ。第2は氷山は海面に現れているのは一部で海面下に多くの部分が存在しているように、沖縄の現状は第1版から第2版の間の6年間に現れたのではなく過去の政治や行政の影響があるという歴史観だ。そのため、江戸時代、明治時代、沖縄戦、米軍支配などの影響から現状の課題との関連づけを行っている。

 第3はゲーム理論と行動経済学の理論を駆使し、沖縄経済の課題の説明を試みている。例えば、米軍基地関係における琉球民政府と米軍政府(USCAR)、日本政府と沖縄県との関係を複数の解決策の存在(ナッシュ均衡)を指摘している。また、基地肯定感には、法則性ある偏り(バイアス)による説明を試みている。第4は新視座の提示である。米軍統治時代の沖縄経済を「沖縄の行動成長」、今後の沖縄の都市軸を考える上で重要な概念である「コナベーション」を示している。第5は、この6年間で顕著となった問題。宮古島市や石垣市の地価の現状、消費者政策、買い物弱者についても論究している。

 次回、明らかにしてもらいたい内容は、次の3点である。第1は、米軍基地問題では合理的な当事者が交渉を行っていながらナッシュ均衡に至る理由、第2は、非合理なバイアスによる基地肯定感、第3は、高度経済成長にもかかわらず資本蓄積などが滞り、中進国の罠(わな)の状況に陥った理由などである。

 (宮平栄治・沖縄経済学会元会長、名桜大学国際学群教授)


 みやぎ・かずひろ 沖縄国際大学経済学部経済学科教授。専門は沖縄経済研究、産業組織論▽うらもと・ひろし 沖縄国際大学経済学部経済学科教授。専門は芸術学、情報教育、メディア教育(視聴覚教育)▽ひが・まさしげ 沖縄国際大学経済学部経済学科教授。専門は公共経済学、地域発展論。

 

宮城和宏・浦本寛史・比嘉正茂 監修
B5判 203頁

¥1,500(税抜き)
 


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