辺野古抗告訴訟判決 続く敗訴に県の戦略は


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 名護市辺野古の新基地建設に関し、埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の決定が違法だとして、県が国を相手に起こした訴訟の判決で、那覇地裁は27日、県の訴えを退けた。判決は埋め立て承認撤回や、その取り消しの内容に全く立ち入らず「門前払い」とした。県は「納得できない」と反発。控訴する方向で弁護団と調整を進める。敗訴が続いているものの、県は対話の要求と並行して法廷闘争を続ける構えだ。(明真南斗、知念征尚)

 「県の訴えを却下する」。判決言い渡しは約30秒で終わった。政府関係者は、以前にも別の裁判で県側が敗訴したことに触れ「普通に考えれば、今回も同じ結果になる」と結果を冷静に受け止めた。県の控訴を念頭に「県もできることは全てやる。われわれも同様だ」と述べ、受けて立つ姿勢を示した。

 一方、県関係者は「想定内」としつつも「実際に突き付けられると、厳しい」と顔をこわばらせた。

地方の危機

 弁論は2回開かれただけで、異例の早期結審だった。撤回やその取り消しの中身を争いたい県は弁論再開を求めたが、聞き入れられることはなかった。県敗訴は国と県双方の関係者が想定していた結果だった。

 ただ判決には、県側の想定を超えて国の肩を持つ表現もあった。那覇地裁は、都道府県知事の処分などに関する国の決定に対し、地方自治体の側から訴訟を起こせないとしても、自治権の侵害とは言えないと容認した。地方自治を軽んじるような表現に、県関係者は批判を強めた。

 県は地方自治の危機を訴え、全国世論を味方に付けたい考えだ。謝花喜一郎副知事が代読した玉城デニー知事の談話は、「地方の自主性・自立性を脅かす対応」「全ての自治体にとって現実に起こりうる」などと強調していた。

県民の目

辺野古サンゴ訴訟の初弁論で福岡高裁那覇支部に入廷する玉城デニー知事(手前)ら=20日午後2時前、那覇市

 裁判闘争が長引くにつれ、知事の支援者らによる傍聴も減ってきた。関心が高い時期には傍聴を懸けた抽選の倍率が10倍を超える時もあった。27日の判決言い渡しで裁判所が用意した17席は報道陣を合わせても埋まらず、抽選はなかった。

 昨年11月に市民団体が主催した勉強会で、県政策参与の照屋義実氏が「負けが続くと、どうも(県民の)戦闘意欲が薄れていく」と懸念を示していた。その後、一つの裁判で敗訴が確定し、今回の抗告訴訟も一審は敗訴となった。

 県議会でも、野党などが敗訴が続いていることを追及し、やり玉に挙げている。20日に別の関連訴訟に伴い開かれた集会で、県側の加藤裕弁護士は「県民の支援なくして頑張りきれない」と訴えた。

 今回の裁判は、過去の最高裁判決の解釈を問うているため、最高裁までを見据えた長期戦となる可能性が高い。27日の地裁判決も中身には立ち入っておらず、県の撤回が否定された訳でも、国の取り消しが正しいとされた訳でもない。だが県幹部は「裁判の論理と県民の理解は別だ。裁判の詳しい内容は伝わりにくく、連続して負けていることだけが目に付くだろう」と頭を抱えている。それでも新基地建設阻止に向けて法廷での闘いを続ける考えを示し「理解してもらえるよう努力が必要だ」と語った。