沖縄でアジア国際平和芸術祭を開く理由 企画から関わる写真家・比嘉豊光さんの思い


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 沖縄アジア国際平和芸術祭2020(主催・一般社団法人すでぃる、沖縄アジア国際平和芸術祭実行委員会、共催・琉球新報社など)が県内各地で開催されている。「平和と鎮魂」をテーマに韓国・済州島や台湾の作家も参画しており、来年の台湾開催も決まった。芸術祭の前身となった5年前のプロジェクトから関わる写真家の比嘉豊光さんは「沖縄で仕込んだ国際展はゼロに近い。芸術祭を平和交流や平和発信の拠点にしていきたい」と語る。(當山幸都)

台湾の作家・陳浚豪さんの作品について説明する比嘉豊光さん=那覇市民ギャラリー

 芸術祭開催の契機は、戦後70年の2015年に糸満市摩文仁で始まった「マブニ・ピース・プロジェクト」にある。毎年6月、沖縄にゆかりのある作家らが平和への思いを絵画や彫刻、映像などの作品に表現してきたが、18年には韓国・済州との交流美術展が開かれ、19年は台湾の作家らも加わった。国際交流が始まって3年目となる今回の芸術祭は「集大成」(比嘉さん)と位置付けられる。

 比嘉さんは沖縄と済州、台湾には「戦争や米軍基地、国家暴力、島という発想などさまざまな共通点とつながりがあり、作家がアート表現の可能性を共有している」と開催の意義を強調する。比嘉さんが昨年訪れた台湾では、台北の基地跡地にできたアートセンターで作家らが活動しているのを目の当たりし、先進性に衝撃を受けたという。

 芸術祭は本来今年6月に開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。この間に首里城焼失1年などを迎え、関連シンポジウムを追加するなど内容も変化している。「今を見つめ、新しい沖縄の問題を自分たちの表現の世界で変えようというのが現代アート。一発屋かもしれないが、世の中の動きを変えられる表現もある」(比嘉さん)

 芸術祭の作品展示やイベントは、那覇市民ギャラリーや南風原文化センター(南風原町)、キャンプタルガニー・アーティスティックファーム(糸満市)など県内8カ所で順次開催される。参加作家は計50人以上、作品は200点以上となっている。詳細は芸術祭ホームページ