【沖縄】1970年のコザ騒動を主題にした写真展「コザ暴動」コザ展に関連し、沖縄市コザ・ミュージックタウンに展示されている自動車の作品について、敷地を所有する市が「安全上の懸念がある」として主催する「コザ暴動プロジェクト」にひっくり返された車を元に戻すことなどを求めている。主催者が応じれば作品の趣旨を損なう恐れもあり、識者は「行政には謙抑的な対応が求められる」と指摘する。
展示作品はコザ騒動で群衆にひっくり返された軍警察のパトカーを模した廃自動車。12日に那覇市で開かれたアートパフォーマンスで実際に横転させた。
主催者によると14日、車を会場に置くと、市側から主催者側に連絡があった。電話で対応した写真家の国吉和夫さんは「苦情が来ているということで『何とかできないか』との話だった。撤去しろということですかと聞くと『そうです』と言われた」と話す。
市は「撤去は求めていない」としており、文書による撤去要求はない。
15日に展示会が始まり、車も横転した状態で展示された。車は周囲をテープで囲まれ、複数のコンクリートブロックで固定された。市は主催者との話し合いでひっくり返った車を「元に戻せないか」と提案した。
市の比嘉盛喜文化芸能課長は「人が多く通る場所で車の底に穴も開いており、けがをする恐れがある。ブロックで支えているが横から力が加われば回るかもしれない。安定させられないかと相談した」と話す。
市は「安全上の懸念があるだけで展示会の趣旨に問題はない」との姿勢だ。
ただ作品は騒動でひっくり返された車が題材となっている。同プロジェクトに関わる写真家の比嘉豊光さんは「作品の内容に口を出すのは表現の自由に関わる」と話す。作品の変更は受け入れずそのまま展示した。
<識者談話>
行政は抑制的対応を
山田健太氏(専修大教授)
復帰後世代が過半を占める社会状況の中で、追体験型の展示は大変興味深いものだけに、問題は曖昧にせず、きちんと解決することが大切だろう。
施設管理者として、域内の安全確保に必要な対応をとるのであれば、その旨を具体的に明示し、利用者との間で認識の齟齬(そご)が生じないよう協議をする必要がある。
これまでも各地で、自治体所管の空間における集会や、映画の上映、作品の展示が「安全上の理由」から使用を取り消されたり、展示の撤去が強制されたりする事例があった。一般的な施設利用全てに言えることではあるが、表現活動については利用者に十分な理解を求める姿勢が行政には必要だ。
行政側は強制性がないと認識していても、市民の側は将来的な関係性の維持などから、必要以上の圧力を感じて過剰反応することが少なからずある。行政側にはこうした力関係まで勘案した謙抑的な対応が求められるし、利用者側も十分な情報共有に努めることが期待される。
(言論法)