沖縄との経済に交流に前向き 駐日ロシア大使が語る日本、米国との関係<琉球フォーラム>


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 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・玻名城泰山琉球新報社長)の12月定例会が9日、那覇市のパシフィックホテル沖縄で開かれた。駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏が「ロシアと沖縄の交流」と題して講演した。ガルージン氏は、昨年ロシアで開かれた国際経済フォーラムに玉城デニー知事が参加したことで持ち上がった県とロシア南部ロストフ州との経済交流について、「今、沖縄県とロストフ州との間の交流が軌道に乗ろうとしている。大使館として最大限支えたい」と強調した。

 ガルージン氏は日ロ間の地域交流は49の都道府県と市町村で行われていると紹介。その上で「ロストフ州はロシアで経済的、文化的にも観光都市として前進していく地域だ。同州は沖縄と連携姉妹交流を進めたいという気持ちがある。沖縄の方も同じような気持ちと伺っている」と述べ、支援していく考えを示した。

 ガルージン氏は、安倍晋三前首相とプーチン大統領が合意した、1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約締結交渉を進める方針を、菅義偉首相も踏襲する方針を示したことを高く評価した。ロシア側が望む平和条約は「日ロ間で平和関係が存在している64年間にわたってお互いに蓄えた大きな実績、肯定的な発展を反映する文書でないといけない」と強調した。

 一方、ガルージン氏は関係が悪化している米国について「一方的に事実無根の口実を根拠に制裁を行い、覇権的な地位を奪い戻すために、今まで国際的な安全保障を支えてきた軍縮に関するいろいろな米ロ条約から脱退してきている」と厳しく非難した。米国をはじめとした欧米諸国が世界の連帯を阻み、新型コロナウイルスの感染を増長させていると主張。ロシアが開発した新型コロナのワクチンを世界各国へ供給、技術移転、現地生産を実施する用意があるとした。

講演に耳を傾ける会員ら=9日午後、那覇市のパシフィックホテル沖縄

 会場との質疑応答

 ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使の講演で、会場との質疑は以下の通り。

 ―日ロの平和条約締結をぜひ早く実現するようお願いしたい。うまくいっていないのはロシアと米国の関係だ。両国の指導者が胸襟を開いて話し合うことを期待したい。来年1月に発効する国連の核兵器禁止条約が重要だ。あの条約にロシアと米国が連携すると世界中が大歓迎する。

 ガルージン大使 「平和条約の問題は、われわれもプーチン大統領が2018年の東方経済フォーラムで発言したように、今すぐ前提条件なしで平和条約を結ぶ用意があるということだ。もし、1956年の日ソ共同宣言を基礎にして考えれば、まず平和条約を締結するべきだとなっている。その点についてロシア側は支障がない。ですから、そういう風に日本側と協議を進めたい」

 「ロシアこそ新戦略兵器削減条約(新START)などの対話を提案している。米国は肯定的に対応しない。今はそれに加えて、政権交代の過渡期だ。新しい大統領が政権の座に就く来年1月以降、米国民が選んだ大統領とそのチームを相手にして対話を進めたいが、ご存じのように、タンゴは2人で踊らないといけない。1人でタンゴは踊れない。米国も積極的に対応することを期待したい」

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