ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使 琉球フォーラム講演要旨


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駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏

 ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使の講演要旨は以下の通り。

 

 まずはロシアが国際関係の行方をどう見ているのかを説明したい。冷戦時代が再び到来しているとの報道が頻繁にされている。しかし、現在と冷戦時代は根本的に違う。つまり冷戦時代は国際関係が米ソという二つの大国の関係によって左右された。今はそれに似通った時代ではない。国際関係はますます多極化しつつある。つまり米国の判断だけで物事が決まる冷戦直後の状況ではない。

 

 多極化の世界は逆戻りできない形で進んできているのに、決してみんながそれを歓迎していない。つまり冷戦直後、西側陣営が築いていた世界的に優位な立場の回復を目指す動きが残念ながら米国や米国の同盟国から行われている。米国がロシア、中国などに対して一方的に事実無根の口実を根拠に、制裁を行い、覇権的な地位を奪い戻すために、今まで国際的な安全保障を支えてきた軍縮に関するいろんな米ロ条約から脱退している。

 

 今、全人類が直面しているコロナ危機を克服するために、75年前の時と同じように力を合わせるべきだ。しかし欧米の報道を見ると、全く逆の方向へ国際社会を導こうとしているとしか思えない。ロシアとしては、なるべく早く新型コロナウイルスのワクチンが供給できるよう国際協力を進めたい。ロシアが登録したワクチンを世界各国に供給できる。技術移転、現地生産を実施する用意もある。

 

 幸いに流動的な国際情勢の中でも、安倍晋三前首相とプーチン大統領の定期的な信頼対話の結果で、日ロ関係はここ数年間、安定している。ロシア側としては安倍氏の政策を継続する菅義偉内閣と緊密に連携しながら、お互いに良い関係をもたらしたい。

 

 今、現在、沖縄県とロシア南部にあるロストフ州との間に交流が軌道に乗ろうとしている。同州は沖縄と連携姉妹交流を進めたいという気持ちがある。沖縄の方も同じような気持ちと聞いている。大使館として最大限に支えたい。

 

 去年、サンクトペテルブルクの国際経済フォーラムに玉城デニー知事が参加され、いろいろロシア側と交流を深めたことに感謝している。ロシア経済界との交流がこれから具体的なプロジェクトの形で表れるのを期待したい。

 

 日ロ関係は互恵的、幅広い形で潜在力がある。信頼関係を構築することによってはじめて、日ロ関係にずっと前から横たわっている平和条約の問題を解決するための環境がつくられるのではないか。

 

琉球フォーラムの記事は以下からどうぞ。

沖縄との経済に交流に前向き 駐日ロシア大使が語る日本、米国との関係<琉球フォーラム>