叙情性豊かな音色で観客を魅了 五嶋龍デビュー25周年公演 てだこ大ホール


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ドビュッシー「バイオリンソナタ 第3楽章」を演奏する五嶋龍(手前)と鈴木隆太郎(右)=11月25日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール

 五嶋龍のデビュー25周年を記念したバイオリンリサイタルの沖縄公演(沖縄タイムス社主催)が11月25日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホールで開かれた。NYを拠点に世界的に活躍する五嶋。ドビュッシーやブラームス、福島第1原発を描いた映画の音楽を担当した岩代太郎の「The F50」など、全6曲を超絶技巧で豊かに奏で、訪れた観客をとりこにした。ピアノは鈴木隆太郎。

 北海道から沖縄まで13カ所を回る全国ツアーの一環。これまでの沖縄公演でも多くのファンを引き付けてきた五嶋。幕開けはサラサーテ「序奏とタランテラ」。美しいメロディーの序奏やテンポの速い舞曲を巧みに演奏した。

 医療関係者への感謝の思いを込めてエルンスト「夏の名残のバラ」を五嶋が音にゆらぎを持たせるように演奏し、弦の特徴を最大限に引き出す芸術的な音色を響かせた。音の美しさに祈りのようなものを感じさせた。ドビュッシー「バイオリンとピアノのためのソナタ」では鈴木のピアノと息の合った演奏で、全3楽章を豊かな音色で奏でた。

 「The F50」はとりわけ異彩を放った。東日本大震災発生時の東京電力福島第1原発事故で奮闘した50人の作業員たちを描いた映画「Fukushima50(フクシマフィフティ)」の音楽を担当した岩代が、25周年ツアーのために書き下ろした曲。壮大なメロディーを叙情性豊かに響かせた。

 最後にブラームス「バイオリンとピアノのためのソナタ第3番」を演奏すると、しばらく拍手が鳴りやまなかった。五嶋が「2020年は大変な年でしたが、来年21年はもっといい年になるようにと願いを込めて今日は演奏させていただきました」とあいさつすると、熱い拍手が送られ終演した。そのほか、イザイ「無伴奏バイオリンソナタ第6番」を演奏した。
 (田中芳)