【国頭】世界自然遺産の候補地となっている沖縄県国頭村の米軍北部訓練場の返還地で15日までに放射性物質「コバルト60」を含む電子部品が見つかった。返還前に米軍が放置した可能性が高い。周辺環境より高い放射線量は確認されていないが、識者は「本来は厳重に管理されるべき物質だ」と指摘する。
部品は国頭村安田のヘリ発着場「FBJ」跡地で、チョウ類研究者の宮城秋乃さんが見つけた。棚原朗琉球大理学部教授(化学)が、琉球放送の依頼で部品の放射線を測定したところ、コバルト60の残留が確認された。放射線量は自然放射程度で人体への影響はないレベルだった。本紙記者も、12月1日に環境放射線モニターで、同じ現場で見つけた同型部品を測定したが、周辺環境との差異は確認されなかった。
棚原氏によると、コバルト60の放射能半減期は5.27年で、測定器の性能と半減期から推定すると、数十年前に放置されたとみられる。部品は「TR管」と呼ばれるレーダーに用いるものとみられる。金属製の容器に入れられ、コンクリートで固められていた。棚原氏は「放射線量は問題ないレベルだが、日本の法律では厳重に管理するべき物質だ」と指摘する。
名桜大の田代豊教授(環境化学)の調査で、部品に付着していた紙からは1キロ当たり9.3ミリグラム、布のような物からは8.1ミリグラムのポリ塩化ビフェニール(PCB)も検出された。人体には影響がない濃度とみられるが、田代教授は「法律では保管、処理法が定められている。放置していいはずがない」と問題視した。
本紙は部品に刻銘されていた海外の製造メーカー2社にコバルト60使用の有無などを問い合わせたが、15日までに回答はない。沖縄防衛局には15日午後5時ごろ質問したが、回答はなかった。
北部訓練場跡地で放射性物質の残留が確認されるのは初とみられる。矢ヶ﨑克馬琉球大名誉教授(物性物理学)は「他の基地で放射線および発熱の防護措置をして、北部訓練場に運び込んだのではないか。訓練場を廃棄物処理場としていた可能性もある」と推察した。