【記者解説】基地問題「予算が人質」警戒強まる 一括交付金1000億円割れ


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 政府の2021年度沖縄関係予算は、沖縄振興一括交付金がついに1千億円台を割り込んだ。20年度当初予算からは33億円減、21年度概算要求の1085億円からは104億円の減額となる。一方で、国が直轄し、「一括交付金の補完」と位置付ける沖縄振興特定事業推進費は、前年当初予算比30億円増の85億円。増額幅は一括交付金の減額分とほぼ同額で、沖縄振興のイニシアチブを県から国に移行させようという政府の思惑がみられる。

 県の裁量で使途が決められる一括交付金制度は12年度に創設され、初年度は1575億円を計上した。14年度に最高の1759億円を計上し、16年度まで1600億円台で推移してきたが、17年度は1358億円に大幅減額され、潮目が変わった。18年度以降、振興予算自体の増減はないが、一括交付金は減り続けている。背景に、県と国との対立が続く米軍普天間飛行場移設問題がちらつく。菅義偉首相は同飛行場の名護市辺野古への移設を推進し、官房長官時代から沖縄振興と基地問題を「リンク」させる発言を繰り返している。「国直轄」の予算が増え続け、沖縄振興が基地問題の「人質」にされる警戒感が県内でさらに強まるのは必至だ。

 一方で、政府側には、県民所得の低迷など課題が山積する経済政策で、抜本的な改善策を打ち出せない県へのいら立ちも見える。

 河野太郎沖縄担当相は、22年度からの新たな沖縄振興計画を見据え、具体的な数字やデータに基づいた現行計画の見直しを図る考えを示している。任期中の県民所得の引き上げにも意欲をみせる。沖縄振興に関わる与党幹部は「県の経済政策は主体性に欠ける。市町村へのケアも不十分だ」と玉城県政への不満をぶつける。間近に迫った次期振計の策定を前に、「沖縄の自立的な経済発展」をうたう理念は大きく揺らいでいる。
 (安里洋輔)