12月17日、東京・永田町の自民党本部。2021年度予算が閣議決定される4日前に開かれた「沖縄振興調査会」の役員会に謝花喜一郎副知事が姿を現した。
「税制についてのお礼のためだ」。謝花氏は、会長の小渕優子衆院議員をはじめ、主立った幹部が顔をそろえた会合に出席した目的をこう述べた。
会合に先立つ10日、与党は来年度税制改正大綱を決定し、21年度に期限切れを迎える酒税の軽減措置など、沖縄関係税制7項目の1年間の延長を正式決定していた。県幹部が「お礼参り」するほどの懸案が解決した後も、「沖縄」にとっての朗報は続いた。
政府は15日、20年度の第3次補正予算に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の整備事業など沖縄関係で総額約189億円を盛り込んだ。県関係国会議員、内閣府の沖縄担当部局の職員らは「補正でこれほどの額を積むことはまれだ」と口をそろえた。
17日の会合は謝花氏の退席後も続き、その場で沖縄関係予算の全容が明かされた。
「4年連続で3010億円というが、補正を含めた『15カ月予算』で考えれば、実質3200億円規模だ」。県選出の与党国会議員はこう胸を張った。
「15カ月予算」は、4月から始まる次年度の本予算に、本年度の補正予算が執行される1~3月を含めるという意味で、内閣府幹部は「民主党から自民党に政権交代した2012年以降に目立つようになったフレーズだ」という。
しかし、「沖縄振興」の主体である県にとってその中身はもろ手を挙げて歓迎できるものではない。
県がハンドリングできる沖縄振興一括交付金は1千億円台を割り込み、国が直轄して交付する沖縄振興特定事業推進費はその減額分をのみこむ形で膨らんだ。
一括交付金のうち、「ソフト交付金」の代わりと位置付ける同制度について内閣府幹部は「年度当初に交付決定する一括交付金に比べ、年度途中での執行が可能でより機動的に運用できる」と説明するが振り分ける際の選定基準は曖昧(あいまい)だ。
沖縄振興と基地問題をリンクさせる動きとの受け止めもある一方で、全国ワーストが定位置となっている県民所得の向上や産業振興に有効な手を打ち出せない県側へのいら立ちが一括交付金の減額という形で顕在化したとの見方もある。
沖縄振興調査会のメンバーである与党重鎮は、「ソフト交付金」の意義について「他府県との物流コスト格差の是正など沖縄ならではの問題を解決するためのものだ」と指摘した。
経済波及効果が限定的な公共施設などの「ハコモノ」に使われる例も目立つとし、「これまでのような運用でいいのか。県や自治体も再考する必要がある」と強調した。 (安里洋輔)
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2021年度の沖縄関係予算は4年連続で3010億円となった。一方で沖縄振興一括交付金は大幅減となり、初めて1千億円を割り込んだ。沖縄振興特別措置法の最終年度ともなる予算編成の裏側で何が起こっていたのか。決定に至る背景を探る。