那覇空港南側 船揚げ場整備停滞 沿岸漁協が同意せず 共同使用の確約求める


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大嶺出身者らが船を置いている瀬長島の砂浜。那覇空港(奥)へと伸びる接続道路の途中に船揚げ場を整備する=19日

 那覇市が計画する那覇空港南側船揚場(船だまり)の整備について、埋め立て予定地の漁業権を持つ3漁協のうち那覇市沿岸漁協から埋め立てに伴う漁業権の消滅について同意が得られず、事業が停滞している。沿岸漁協は「整備に関する市の説明が不十分だった。船揚げ場の共同利用が確約できなければ同意できない」と訴え、双方の主張が平行線をたどっている。

 旧軍飛行場の代償

 船揚げ場は、戦前の日本軍小禄飛行場の用地接収に伴い拠点を失った、旧小禄村大嶺出身の漁業者への代償施設として整備する。大嶺出身者は現在、瀬長島北側の砂浜や泊漁港、糸満漁港を拠点として利用しているという。

 大嶺出身の漁業者は戦後、那覇地区漁協に加入し、小禄支部となった。那覇地区漁協は1979年から、船揚場または漁港の整備を関係機関に要請してきた。那覇空港第2滑走路建設に伴う公有水面埋め立てに同意する代わりに、国、県、那覇市から2013年に船揚げ場整備の確約を取り付けた。当初は那覇軍港内に整備する計画だったが時間を要するため、17年に瀬長島北側から那覇空港へと接続する道路の途中に整備することになった。

 事業主体は那覇市で事業費は約12億8千万円。このうち半分を県が補助する。国は船揚げ場に行く道路を整備する。現在は実施設計を完了し、岸壁などに使うブロックを製作している。23年度中に完成予定だ。

 「土地喪失と同じ」

 沿岸漁協の石垣伸太郎代表理事や仲里司参事は「漁業権の消滅は漁民にとって土地を失うのと同じことだ。他の漁港も共同利用してきたのだから、今回の船揚げ場も使わせてほしい」と求める。

 一方、市は事業の趣旨を踏まえ、大嶺出身者を優先的に使用させ、余剰があれば市内の他の漁業者も利用できるようにする方針だ。現在の那覇地区漁協小禄支部には大嶺出身者以外も所属しているが、同漁協の山内得信組合長は「大嶺出身でなくとも小禄支部の組合員は優先使用させてほしい」と話す。船揚げ場は33隻が利用できるように計画されている。この機会に船を大型化する漁民もおり、実際に何隻分が余るかは分からないという。

 市が整備予定海域の漁業権を持つ3漁協へ正式に説明したのは今年3月。市は「船揚げ場整備については各漁協も参加する市水産業振興協議会などでも情報提供してきた。これまで沿岸漁協から要望はなく、理解は得られていると考えていた」とする。だが沿岸漁協は「それで説明してきたという認識は甘い」と反発している。市は「丁寧に説明を尽くしていく」とするが解決の見通しは立っておらず、協議の難航が予想される。
 (伊佐尚記)