コロナ禍「波と波の間で稼ぐ」星野リゾート代表に聞く沖縄観光戦略


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 今年に入り、県内で新たに2施設を開業するなど沖縄で事業展開を進める星野リゾート(長野県)。星野佳路代表に、コロナ禍の中での観光振興の考え方や星野リゾートの事業展開について聞いた。

(聞き手 中村優希)

―コロナ禍の中でホテル運営の考え方は。
 「感染拡大の波が来ている時はコストを削減して我慢するが、波と波の間でしっかりと稼ぐことができれば年間を通して黒字化できる。コロナ禍の1~2年は赤字でさえなければ利益を出さなくても良い」
 「これまで黒字を出すために客室稼働率が65%以上必要だったホテルが、40~50%の稼働で黒字になっている。雇用調整助成金をうまく活用することで、利益を生み出すポイント『損益分岐点』が下がっている。5月ごろから客の数に対して過剰な人員を置かないように徹底してきた。月ごとで組んでいた従業員のシフトを、1日ごとに組むようにしている。7月ごろからは多くのホテルで黒字化している」

 ―独自のコロナ対策宣言を出している。
 「6月に、国内旅行に対する認識について市場調査を関東圏で実施した。全体の3割の人が迷っていると答えた。その理由が『感染が怖い』『行って良いか分からない』の二つだった。ビュッフェの感染防止対策の徹底や施設の混雑状況の見える化に早い段階から取り組み、感染対策にかなり力を入れた」

 ―需要の平準化を唱えている。
 「沖縄は繁忙期と閑散期の差が大きく、オフシーズンが長すぎる。そのため質の高い人材を継続して雇用するのが難しい。給与所得が低いと言われている沖縄観光産業の根本的な理由はそこにある」
 「需要を平準化できれば、正社員の比率を高めることができる。人材が定着して熟練度が高まり、サービスのレベルが上がる。サービスに満足してファンが増えるという好循環になる。正社員だとトレーニングにも力を入れられる。星のや竹富島は7割、星のや沖縄は8~9割の正社員率となっている」

 ―繁忙期と閑散期の需要を平準化するための課題は。
 「琉球、沖縄の文化をテーマにコンテンツ開発に取り組む。星のや竹富島では、沖縄観光全体では閑散期の10、11月の種子取祭の時期に客室稼働が高まる。文化的に魅力ある観光地を作れば、時期に関係なく国内外から需要を取り込める」
 「沖縄の魅力は奥深い。国際通りのような街もあれば、竹富島には沖縄の原風景が広がり、西表島に行くとジャングルの自然観光に変わる。毎回違った魅力を提案できると、リピーター獲得にもつながる」