[日曜の風・室井佑月]命守ろうとしたのか 国のコロナ対策


[日曜の風・室井佑月]命守ろうとしたのか 国のコロナ対策
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 12月23日時点の新型コロナウイルス感染症の感染者は、20万3113例、死亡者は2994人(厚生労働省ホームページより)。感染は拡大している。

 麻生太郎副総理は5月に、「これは風邪だから。7月になったらだいたい止まっている」「この種の話は6月になんとなく収まるのかなと思わないでもない」といっていた。

 菅義偉総理はつい先日の12月21日、「新型コロナ対策で結果を出すことが大事だ。やれることはすべてやるという意識で、先頭に立って取り組む」といっていた。

 5月の時点での麻生副総理の考えは的外れだった。その時点から今現在の日本のコロナ対策の決定に、副総理である麻生氏の口はどの程度入っていたのだろう。

 菅総理にいたっては、12月21日の時点でこの発言である。日本以外のどこの国でも、もうそんなことは当たり前。逆に先進国の中では日本だけではないか、国民を前にしての会見から逃げまわり、今さらそんなことをいっているトップは。

 新型コロナウイルスに対し複数の専門家たちは、3月くらいから「冬になれば感染は拡大する恐れがある」といっていた。

 専門家たちの意見を真剣に聞いていれば、感染拡大の防止や、医療体制を守るための政策に、力を注いでいたはずだ。感染者20万人越え、死者3千人に到達しそうな今はなかった。

 政府がやったことといえば、本来、コロナが収まってからやるはずであった利権絡みの「GO TO キャンペーン」をなにがなんでも推し進めただけ。

 12月22日付の東京新聞の「あれもこれも『コロナ対策』で膨れ上がった21年度予算案 給付金事業は縮小」という記事に書かれてあったが、コロナ対策の名のもと、費用対効果が不透明な政策や、コロナとは関連性が薄い事業に多くの予算がつけられたという。

 コロナも彼らにとっては税金を横流しするチャンスなのだね。あたしたちの命や健康を守ろうと考え、対策に失敗したのではない。

(室井佑月、作家)